ところが、この設計図はそっくりそのまま北朝鮮に渡ったことが当局の調査で明らかになった。国家情報院はB氏を数年間にわたって監視・追跡しており、B氏が北朝鮮偵察総局の工作員と数十回にわたって会っていた事実を把握していたことが分かった。B氏は実質的に北朝鮮に取り込まれた連絡役だったというわけだ。
A氏は自分がB氏に設計図を渡した容疑は認めたものの、B氏が北朝鮮の工作員に設計図を渡したことは知らなかったと供述しているという。しかし、捜査当局の関係者は「A氏がB氏と交わした会話を復元すると、A氏はB氏のバックに北朝鮮がいるということを知りながら設計図を入手しており、その証拠が幾つも確認できる」と話した。当局は、A氏がB氏を通じて北朝鮮偵察総局の巨額の工作資金を「事業代金」の名目で受け取っていたのかどうかについても調査している。
A氏が北朝鮮に渡した国家核心技術は、ミサイルなど先端兵器を製造する際に金属を精密に切断する装置やモーターの設計図だという。当局の関係者は「少なくとも数百億ウォン(数十億円)相当の価値がある技術が北朝鮮の手に渡ったことになる」として「韓国から盗み取った技術を利用して、北朝鮮が短期間で兵器技術の開発で成果を上げたとみられる」と述べた。実際に北朝鮮は最近、固体燃料式のICBM「火星18型」を開発したと宣伝するなど、ミサイル技術の高度化に拍車をかけている。
北朝鮮偵察総局が水面下で韓国の技術を入手していたケースは今回が初めてではない。釜山警察庁の安保捜査課は、16年4月から7月にかけて北朝鮮に韓国の太陽光発電システムなどを密輸した疑い(国家保安法違反)で、釜山の貿易会社に勤務する50代の実業家を昨年、検察に送致した。この実業家は北朝鮮偵察総局に所属する工作員と接触し、韓国製の太陽光発電設備1560件を北朝鮮に渡していたことが分かった。韓国警察庁の国家捜査本部によると、国家捜査本部が発足した21年にはわずか1件だった国家核心技術流出の摘発件数は、22年には4件、昨年は2件だったが、今年に入り10件以上に急増している。
チュ・ヒョンシク記者、ク・アモ記者