中国が今月8日から韓国国籍者を対象に短期滞在ビザを免除したことで、中国に観光旅行に出かける韓国人が増えている。しかし、有名観光地でさえ現金やクレジットカードによる決済ができなかったり、現地の電話番号でしか予約ができなかったりして、韓国人観光客の不満が高まっている。中国のフィンテックは世界的にも優れた水準にあり、韓国の一部ITアプリとも連動が可能だが、そうしたシステムに慣れていない高齢者などは「カードも現金も受け取ってもらえない」と苦情を訴えた。専門家は「中国のIT産業は過渡的な段階を飛ばし、一気に最先端技術を導入した面がある」と指摘した。
【写真】深圳のコンビニで手のひらをかざして商品代金を決済する様子
今月15日から18日まで2泊3日の日程で妻と上海を訪れた韓国人観光客のAさん(57)は衝撃を受けた。無人店舗や自動販売機だけでなく、食堂や雑貨店でも現金はもちろん、ビザカードもマスターカードも使えなかった。中国国内のスマホ決済アプリや口座送金しか使えないという反応にAさんは絶句したという。Aさんは「街頭で水1本も買えずに死にそうだった」と話した。
最近中国では電子決済システムの発展に伴い、「路上の物乞いもQRコードで施しを受ける」とまで言われているほどだ。しかし、そうした中国国内向けのフィンテックの発展がむしろ外国人の旅行を不便にしていると指摘されている。
今月初め、江蘇省蘇州市を旅行した会社員Bさん(33)は、地下鉄に乗ろうとして困った。中国政府が開発したアプリをインストールし、名前と旅券番号を入力するよう求められたところまでは我慢できたという。ところが、アプリを使うためには中国現地の携帯電話番号を入力して認証を受ける必要があるというメッセージにあきれた。「結局タクシーに乗ったが、タクシー運転手も小銭を持ち合わせていないというので、16元(約340円)の距離に50元を払った」と話した。
大学院生のLさん(26)は世界文化遺産の敦煌で莫高窟を見物するために今月14日に出国した。しかし、そこでも中国現地の携帯電話番号がなければ予約ができなかった。Lさんは「現場で発売される入場券もすぐに売り切れた。韓国から2800キロ離れたところまでやってきて、莫高窟を目前にして引き返さなければならなかった。二度と中国には行きたくない」と話した。
最近中国のソーシャルメディア、微博(ウェイボー)ではある韓国人女性が「中国の決済システムを改善すべきだ」と訴える動画が話題になった。多くの中国人は「我々は気づかなかったが、外国人には不便かもしれない」という反応を示した。しかし、一部には「韓国の決済システムが遅れているのになぜ我々を責めるのか」「韓国人は井の中のかわずのようだ」との声もあった。
中国政府もこうした問題を認識し、さまざまな措置を打ち出している。今年3月、中国国務院(中央政府)は「現金を使用可能な環境を持続的に最適化し、交通、買い物、エンターテインメント、観光、宿泊などの分野で現金による支払いを保障する」とする一方、「現金を拒否すれば処罰される可能性がある点を広報し、事業者はお釣りを準備しなければならない」と呼びかけた。しかし、事業者は協力に消極的で、外国人観光客の不便が続いている
コ・ユチャン記者