ところが文在寅政権は、任期が終わるまでの5年間、一般環境影響評価のための評価協議会を立ち上げなかった。19年2月に米国が環境影響評価を受けるため事業計画書を韓国政府に提出し、韓国政府は環境影響評価法に基づいて政府と住民代表、民間専門家などが参加する協議会を立ち上げなければならなくなったが、関連の手続きを進めなかった。これに関連して昨年、「文在寅政権の関係者が19年12月の文大統領訪中を前に評価協議会の立ち上げを引き延ばした」という事実が国防部の文書公開に伴って発覚した。監査院では、文在寅政権の大統領府関係者が、THAADの正式配備を遅らせるためこうしたことを意図的に行ったのではないかと疑っているという。
監査院は、20年5月29日のTHAADミサイル交換のための韓国軍と在韓米軍の共同作戦を、文在寅政権の大統領府・国防部関係者が事前に外部に漏らしていた状況も把握したという。韓米は同日の夜、奇襲的に輸送作戦を開始してTHAAD基地にある古いミサイルなどの装備を交換しようとした。THAAD関連の装備搬入を妨害する住民や市民団体関係者との衝突を避けるためだった。しかし実際には、作戦の過程で住民と警察の間でもみ合いが起きた。監査院では、大統領府関係者がTHAAD反対派の市民団体側に作戦日時をあらかじめ知らせ、これによって反対派が搬入阻止に乗り出すことができたと疑っていることが分かった。
文在寅政権は、中国の反発を抑えるとして中国政府に何度も「事前説明」を行った。19年2月に在韓米軍が事業計画書を提出した翌日も、文在寅政権は外交チャンネルを通して中国政府に関連事項を説明した。THAADミサイル交換作戦の当時も、文在寅政権は「さまざまな外交ルートを通して中国側に事前説明を行い、理解を求めた」という。
しかし監査院では、こうした「事前説明」に2級秘密に該当する軍事作戦の内容が含まれているなど、通常の外交的説明の水準を超えるものと判断していることが分かった。これに関連して、当時の大統領府関係者らは、監査院の調べに対し「外交的な理由でそうした」と主張したと伝えられている。だが中国政府は、THAADミサイルの交換作戦の直後、「米国は中国の利益を害してはならず、中韓関係も妨害してはならない」と反発した。米国も、韓国が中国に「事前説明」をしたことについて、軍事作戦後に強く抗議したという。
文在寅政権時代の大統領府に勤務していた人物は、監査院が検察に捜査を依頼したことと関連して「常識的に話にならない」とし「対応する価値はない」とコメントした。
キム・ギョンピル記者、イ・スルビ記者