■「給料3倍」で台湾技術者の確保に必死
華為はTSMC出身の技術者の引き抜きにも必死だといいます。仏紙ルモンドは今月1日、「華為がヘッドハンティング業者を通じ、台湾の半導体技術者の確保に乗り出している」と報じました。
同紙の取材に応じた台湾の半導体パッケージング専門家(43)は3カ月に1回、華為の委託を受けたヘッドハンティング業者から転職提案の電子メールを受け取っているとした上で、「月給を3倍に上げると言ってきたが、これまで携わった会社の機密を流出させることになるので、回答していない」と語りました。この専門家はTSMC出身で、現在は台湾にある米国企業に勤めているといいます。
米ITメディアのフォンアリーナも「華為が米国の制裁をかいくぐり、先端半導体チップを製造するため、ヘッドハンティング業者を通じ、TSMC技術者たちに接触している」と報じました。華為は3倍の年俸を提示していますが、TSMCの技術者から拒否されるケースが多いそうです。
■「独自開発を誇りつつ、技術を盗み、人材引き抜き」
華為は半導体設計能力は世界的水準にありますが、自社で製造はしていません。しかし、最近は半導体製造にも参入する準備をしているそうです。台湾の週刊誌「商業周刊」は華為が広東省深圳市北部の竜華区にある九竜山工業団地に50万平方メートル規模の第2本社を建てており、そこが半導体製造施設になる可能性があると伝えました。中国国内の他の半導体企業で働く台湾の技術者も深センに続々と移ってきていますが、それでも足りないため、台湾から人材を追加で引き抜こうとしているということです。
アメリカもこうした状況に備え、昨年6月に韓国、台湾、日本関連の輸出規制を担当する商務省産業安全保障局(BIS)の係官を台湾で米国の代表部に相当する米国在台協会(AIT)に派遣し、今年は商務省のマシュー・ボーマン副次官補(輸出管理担当)が台湾を訪れ、台湾の半導体業界幹部らと会ったということです。
今回の事件を巡っては、米国による制裁網にも抜け穴が少なくないとする懸念を生む一方、中国のもどかしい現実も表れているとの評価が聞かれます。中国は開口一番、独自の研究開発、半導体の自立を叫んでいるが、実は裏口で技術を盗み、人材を引き抜くことの方に熱心だったのです。
崔有植(チェ・ユシク)記者