韓国の無人機、北朝鮮へのビラまきは自粛して監視・偵察だけに使おう【寄稿】

 このところ北朝鮮が繰り広げている無人機騒動は、ロシア派兵や新型の「火星19」大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の余波に押されて忘れられつつあるが、今後の対北政策や国家安全保障戦略に示唆するところが少なくない。北朝鮮外務省は10月11日、「大韓民国の無人機が3日、9日、10日の深夜に平壌上空へ侵入し、反共和国政治謀略扇動ビラを散布した」と主張し「引き続き挑発を敢行するときはすさまじい事態に直面することになるだろう」と脅迫した。13日には総参謀部が8個砲兵旅団に射撃準備態勢の指示を下したのに続き、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が、韓国の国家安全保障会議(NSC)に相当する「国防および安全分野に関する協議会」を招集した、という発表も行われた。北朝鮮が韓国の責任を立証すると称して急造した資料だけでは、誰が無人機を送り込んだのか確認できないが、北朝鮮指導部が非常に大きな衝撃を受けたことは明らかだ。北朝鮮が見せた激しい反応は、急所を突かれたことに対する悲鳴であって「無人機まで動員したビラ散布だけはどうか自粛してほしい」という泣訴に近い。

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 北朝鮮は、無人機そのものよりも無人機が散布するビラの方を恐れているのだろう。ビラの中には、金正恩体制の存立基盤を揺るがす「不純な」内容が含まれているからだ。4年前に北朝鮮が「反動思想文化排撃法」を制定し、重い刑でもって韓国ドラマの視聴をやめさせようとし始めたのも、青少年の思想的動揺を防ぐための苦肉の策だった。南北関係を2国家間体制に転換し、永久分断を政権生存の盾にして軍事境界線に高い壁を築いたからといって、「反動思想文化」の流入を防げるわけではない。北朝鮮政権の運命を決定する対北情報・文化戦争の手段としての無人機の効用と威力は、北朝鮮が今回の騒動を通して確認してくれた。それでも、ビラ散布に無人機を活用することについては、二つの理由から自制する必要がある。

 第一に、得るものに比してリスクがあまりに大きい。北朝鮮はありとあらゆる虚勢を張っているが、昨年10月にロシアに大量の砲弾とミサイルを輸出した後は、対南(対韓国)関係においておおむね守勢的・防御的基調を取っており、軍事的衝突を避けようとする気配も明らかだ。民間団体による、風船を利用した対北ビラ散布に対して、汚物風船で対応するという行動も幼稚で憎むべきものではあるが、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に開城工業団地の南北連絡事務所を爆破してビラ禁止法の制定を強く迫った態度と比べれば、穏便になったと言える。こうした状況の中で無人機まで動員し、平壌の心臓部にビラを散布した場合、金正恩政権の恐怖心を刺激して集団発作や過剰対応を触発する危険がある。無人機がビラ散布にどれほど有用でも、韓国国民を不安にさせて武力衝突の危険を甘受しつつ強行するほどの価値があるかどうかは疑問だ。

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  • ▲北朝鮮が「韓国軍で運用しているドローンと同一機種の無人機の残骸を平壌で発見した」と主張し、関連の写真を公開した。2024.10.19/写真=朝鮮中央通信・聯合ニュース

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