韓国籍の在日韓国人(26万人)が韓国で暮らそうと思ったら「在外国民用」住民番号をもらわなければならない。韓国語ができなくても兵役に服するが、出産・養育費の現金支援、住宅および融資面での恩恵からは排除され、医療保険料も高い。「不完全韓国人」だ。在外国民に適用される包括規定が、特殊地位にある彼らにもそのまま適用されてしまうからだ。
在日韓国人は在外国民参政権排除(2007)、保育料支援排除(2018)について違憲訴訟を提起し、どちらも勝訴したが、差別感を振り払うことはできていない。彼らが教師になるのを、「法」は阻まないが、現実では教育学部に入学する時点で道をふさがれる。韓国社会に隠然とまん延する「マイクロアグレッション(無自覚の差別行為)」だ。在日韓国人らは「韓国籍を守った代償を支払っている」「日本人であれば多文化の恩恵でも受けられただろう」と自嘲する。逆の主張もある。「韓国籍の付与は、かつては差別だったが、今の韓国の立場を考慮すると『優待』に見える」。韓日の経済力が逆転すれば、そうした主張はいっそう強まるだろう。
だが、彼らはフリーライダー(ただ乗りする人)ではない。『韓国の経済発展と在日韓国企業人の役割』を書いた韓国系の永野慎一郞教授は「1964年までに在日資金2569万ドル(2009年現在の価値で1億2000万ドル=現在のレートで約183億円。以下同じ)が韓国に流れ込み、祖国訪問に持っていく『ポケットマネー』も相当あった」と語った。「漢江の奇跡」の出発点である九老工業団地には、日本の電気電子・化学・肥料・金属など200を超える在日韓国人企業が入った。解放後に在日韓国人が送金した日本円、辛格浩(シン・ギョクホ。日本名:重光武雄。ロッテ創業者)など在日韓国人実業家による韓国経済への寄与はおよそ「2000兆ウォン(約220兆円)」だという主張もある。在日韓国人に対して、最小限の「利子」を支払うこともできていない、という考えを抱く。
朴垠柱(パク・ウンジュ)記者