インドの一部地域が飲食物に異物を入れる行為に対して厳格に処罰する法令の制定を推進している。インドでは最近、飲食物に唾や小便などを入れる事件が相次いで発生しており、州政府レベルで対応に乗り出したわけだ。英国BBCが10月29日、報じた。
報道によると、インド北部のウッタラーカンド州は、飲食物に唾や小便、土などの異物を入れた場合、最大で10万ルピー(約18万2400円)の罰金を科すと発表した。同州に近いウッタル・プラデーシュ州は飲食物に唾を吐くなどの行為が摘発された場合、最大で懲役10年の刑を宣告する条例の制定を推進している。この地域は飲食店経営者の身元表示を義務付けるとの指針も発表した。
州政府がこのような法案を検討しているのは、露天商などが飲食物に唾を吐く動画がインターネット上で拡散され、食の安全に対する懸念が高まっているからだ。最近ではインドの家政婦が雇用主の食べる料理にこっそり小便をかける姿がカメラに捉えられ、物議を醸した。
食品の安全問題はインドの主な社会問題の一つだ。インド食品安全基準局(FSSAI)によると、インドでは安全基準を順守しない食品によって毎年6億人の感染者と40万人の死者が発生している。
ただしこのような法案が、インドでも少数派のイスラム教徒を誹謗(ひぼう)中傷する際に悪用される恐れがあるとの指摘も出ている。飲食物に唾を吐く動画が拡散されるたびに、一部のヒンドゥー民族主義者らはSNS(交流サイト)で「ムスリムがヒンドゥー教徒用の料理に唾を吐いて汚染させている」などの投稿をアップしている。家政婦による小便事件でも、この女性がムスリムだという根拠のないうわさが広がり、ムスリムが批判の対象となった。警察が調査した結果、問題を起こした家政婦はヒンドゥー教徒だったことが分かった。
現地メディア「インディアン・エクスプレス」は今回の法令推進について「既に立場の不安定なマイノリティーを標的にするシグナルとして作用する恐れがある」と指摘した。
チェ・ヘスン記者