台湾海峡は、韓国と日本が原油や天然ガス、石炭などを輸入するルートでもあります。日本は原油全体の95%、韓国は65%を中東諸国から輸入しており、この原油は台湾海峡を通って入ってきます。台湾海峡や台湾南部のルソン海峡がふさがれたら、フィリピン南部に迂回(うかい)しなければならず、航路が1600キロも長くなります。所要時間と費用、どちらもかなり増えるでしょう。
韓国と日本はハイテク製造業が発達した国で、半導体をはじめとする電子製品や機械部品などを中国・台湾から輸入していますが、この供給網も途切れることになります。スマホやコンピューター、タブレット、家電など電子製品はもちろん、自動車の生産にも支障が生じることになるはずです。ブルームバーグ・エコノミクスは、台湾侵攻が発生した最初の1年で韓国はGDPの23.3%、日本はGDPの13.5%に達する損失を被るだろうと予想しました。
■アフリカの低開発国は経済危機に直面
中国に鉄鉱石や液化天然ガス(LNG)、石炭を大量に輸出しているオーストラリアも、大きな被害に遭うと見込まれました。22年のオーストラリアの輸出のうち、26.83%(1090億ドル=約16兆4000億円)が台湾海峡経由で行われたといいます。
もちろん、戦争の当時者となる中国や台湾の被害も大きいはずです。ブルームバーグは、台湾にはGDP全体の40%、中国には16.7%に達する経済的損失が生じると予想しました。
中東・アフリカの開発途上国・低開発国も被害に見舞われるといいます。中央アフリカのコンゴは、22年に中国に銅やコバルトなどの鉱物を130億ドル分(約1兆9600億円)輸出しましたが、これは同国の輸出全体の62%を占める、といいます。北アフリカのエリトリアは、生産している亜鉛の70%、銅は100%を中国に輸出します。ガボンとアンゴラも、それぞれ生産した原油の40%を中国に送っています。中国向けの輸出ルートが断たれたら、経済が揺らぐことになるでしょう。
サウジアラビアやオマーン、イラクなど中東の産油国も、輸出している原油の30%は台湾海峡経由で運ばれています。
■BRICs9カ国も大きな打撃を受けるもよう
中国が属するBRICsの状況も似たようなものです。BRICs9カ国は輸出の14%、輸入の15%を台湾海峡に依存しています。中でもアラブ首長国連邦、イラン、インド、南アフリカ共和国、エチオピアなどが高い比重を占めています。
中国はこれまで、国際社会において開発途上国・低開発国の代弁者を自任してきましたが、台湾侵攻はこうした国々に大きな経済的苦痛を与えるものだ-とCSISは指摘しました。
中国は台湾海峡を自国の内海であると主張しますが、国際社会の立場からは、世界貿易の大動脈だといえます。ここで大規模な戦乱が発生したら、世界経済はもちろん、中国自身にとっても致命的な大災厄になるのです。
崔有植(チェ・ユシク)記者