「俺は生きている」 脳死と判定された36歳米男性、臓器摘出直前に目を開ける /米ケンタッキー州

 米国ケンタッキー州の病院で、脳死と判定された男性が臓器摘出の直前に奇跡的に息を吹き返していたことが分かり、物議を醸している。米国の公営ラジオ放送NPRが17日(現地時間)、報じた。

【写真】臓器摘出直前に息を吹き返したアンソニー・トーマスTJフーバー2世さん(36)

 報道によると、生き返ったのはアンソニー・トーマスTJフーバー2世さん(36)。フーバーさんは2021年10月、薬物の過剰摂取でケンタッキー州のバプティスト・ヘルス・リッチモンド病院に搬送された。医療陣はフーバーさんの状態を確認した上で、脳死と判定した。

 その後、医療陣は臓器提供を進めるために心臓カテーテル検査を実施。心臓カテーテル検査は、臓器提供者の心臓が移植が可能なほど健康なのか評価するために行われる。

 ところがこの時、すでに脳死判定を受けて死亡したも同然だったフーバーさんが目を開けたのだ。しばらくするとフーバーさんは寝返りを打ちながら涙を流し始めた。

 その場にいた元ケンタッキー臓器提供協会(KODA)職員のナターシャ・ミラーさんは「検査を実施していた外科医は『私はもう出ていきます。この場所と私は何ら関係がない』と言っていた」「あまりに混乱した状況で、皆怒りに満ちていた」と話した。さらに「臓器提供コーディネーターが上司に電話をかけ、アドバイスを求めるのを偶然聞いた」と話した。

 結局、フーバーさんの臓器摘出は中止になった。幸いフーバーさんは無事に家族の所に帰ったという。

フーバーさんの弟、ドナ・ローラーさんは「兄が集中治療室から手術室に移動する時、目を開いて周囲を見渡しているようだった。何かが間違っているのではないかと思い、心配になった」「まるで兄は『俺はまだ生きている』と僕たちに知らせてくれたようだった」と話した。ローラーさんは病院側にこの話を伝えたが、医療陣は「よくある反射作用にすぎない」と言って取り合ってくれなかったという。

 このエピソードは、臓器保存の専門家であるニコレタ・マーティン氏が今年9月、臓器調達組織を調査する聴聞会を開催した米国下院エネルギー・商業委員会に書簡を送ったことがきっかけで明るみに出た。

 マーティン氏は「私は自分の人生全てを臓器提供・移植にささげた」として「今回のようなことが起きうるということも怖いし、臓器提供者を保護するためにもっと多くの対策が取られているべきなのにそうした対策がないのが怖い」と話した。同氏はこの時の記録を見たとして「フーバーさんが目覚めた時、医療陣は鎮静剤を投与してフーバーさんの臓器を摘出するための準備を続けた」と主張した。また「KODAの関係者たちがこの問題を小さく見せようとした」と訴えた。

 マーティン氏は「生きているのに誰かが自分の体を切り裂いて身体の一部を取り出すなどということは、全ての人々にとって『最悪の悪夢』」だとして「本当に恐ろしい」と話した。

 臓器の調達を監督する連邦健康資源サービス管理局(HRSA)は現在、この問題を調査している。バプティスト・ヘルス・リッチモンド病院側はNPRに送付した声明で「患者の安全が最優先」だとして「我々は患者及び家族と緊密に協力し、臓器提供に対する彼らの願いが守られるよう努力している」と述べた。

キム・ガヨン記者

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