アカデミー賞で4冠に輝いた韓国映画『パラサイト 半地下の家族』も、その4冠の裏には米国人翻訳者の存在があった。「ソウル大文書偽造学科みたいなのはないの?」を「Wow, does Oxford have a major in document forgery?」と訳し、「1インチの壁(字幕という障壁)」を鮮やかに乗り越えた翻訳者のダルシー・パケット氏。原作の声と個性を生かしながらも、最適な着地点を見いだした最大の立役者だ。ソウル暮らしが25年を超えたというパケット氏は「韓国は見違えるほど発展したが、韓国の人たちが幸せなのかは分からない」とした上で「韓国の次の課題は、物質的な豊かさではなく、精神面の健康」と話した。
K-POP、Kムービー、Kドラマ、Kフードに続き、韓国文学まで注目され、世界が韓国とKカルチャー(韓国の文化)に憧れている。この絶好のチャンスに、最も時代錯誤的で精神面の健康に害を与える集団は韓国政界だ。叫び声、非難、嫌悪など、国会を支配する言語はあまりに低劣で恥ずかしく、険悪なことこの上ない。国政監査の場でいがみ合っていた政治家たちが、ノーベル文学賞のニュースを知ったとたんに争いをやめ、拍手しながら笑顔を見せるシーンはグロテスクだった。
韓国社会の一部が、韓江氏の小説を巡ってあれこれうるさく騒ぎ立てている。どう読むのかは読者の自由だが、フィクションは歴史でもドキュメンタリーでもない。共に喜び、祝うべきことなのに、自身の解釈や歴史意識を強要し「あなたは左か、それとも右か」などと問い詰める野蛮な場面を目にする。分断をあおるのはやめてほしい。心の健康にとって害悪だ。創作と翻訳という作業をもっと支援し、第二のデボラ・スミス、ダルシー・パケットが登場するよう底辺を拡大すべきだ。祝いの膳をひっくり返している場合ではない。
朴敦圭(パク・トンギュ)記者