ソウル市教育監(教育庁のトップ)への当選が確実となった16日深夜、鄭根植(チョン・グンシク)候補は選挙事務所で当選の感想を語ったが、この席にはどういうわけかチョ・ヒヨン前ソウル市教育監の姿も見えた。チョ前教育監は鄭候補と握手を交わして抱き合い、鄭候補の手を高く上げるポーズまで取った。鄭候補の腕をたたきながら「よくやった」と語りかける様子も見られた。チョ前教育監の方が選挙で勝って凱旋(がいせん)でもしたかのような雰囲気だった。
【写真】不法行為から6年・就任10年で不名誉失職したソウル市教育監チョ・ヒヨン氏
今回の選挙はチョ前教育監が在職中の違法行為で解任されたことを受けて行われた。チョ前教育監は自らの選挙の際に支援した全教組所属の元教師ら5人を2018年に不当に採用した容疑により、大法院(最高裁判所に相当)で懲役1年6カ月・執行猶予2年の刑が確定した。そのため有権者であるソウル市民も関心がなく、誰が立候補したかも分からない教育監選挙をまたも行わねばならなくなった。この選挙を行うために565億ウォン(約62億円)もの国民の税金が使われた。児童生徒のために使うべき大切な税金が無意味な選挙のためにばらまかれたのだ。しかも一生かけてこの税金を返済し、謝罪しても足りないような人間がテレビに出て凱旋将軍のように振る舞った。
チョ前教育監は2人の息子をいずれも外国語高校に通わせながら、教育監在任中には外国語高校や自律型私立高校(自私高)を先頭に立ってなくそうとした人物だ。力ずくで自私高廃止を進めたことで8回訴えられ全て敗訴した。この問題で批判を受けたチョ前教育監は「ネロナムブル(私がすればロマンス、他人がすれば不倫=身内に甘く、身内以外に厳しいこと)との批判は受け入れる」「両班制度の廃止を両班出身者が主張した時の方がより説得力がある」と述べた。公人として倫理意識がこの程度の人物がこれまで10年にわたりソウル市の教育政策を進めてきたことは残念でならない。
17日に行われた鄭当選人の就任式ではチョ前教育監だけでなく郭魯鍱(クァク・ノヒョン)元教育監も鄭当選人のすぐ隣に座った。郭元教育監も不正選挙で懲役刑まで受けた前科者のため、新任の教育監就任式の壇上に不正行為で処罰された犯罪人たちが並ぶ形となった。これでは鄭当選人もどんな人物か疑問を持たざるを得ない。ソウル市教育監は全教組に近い人物がこれまでほぼ独占してきた。投票率があまりに低く、有権者も候補者について知らない「カムカム(何も分からない)」と呼ばれる選挙では強固な組織票を持つ勢力が独占する構造になりやすい。そのため鄭当選人のように教育監の地位に詳しい連中は交代で就任できると考え、恥ずかしいとも思わず自分たちだけの祭りを楽しんでいるのだ。