秋夕(中秋節)の連休に中国が独自技術で回路線幅8ナノメートル級の半導体製造が可能な深紫外線(DUV)露光装備を開発したというニュースが伝わりました。最初に中国のポータルサイトとソーシャルメディアにニュースが掲載され、台湾・香港メディアと一部の韓国メディアも追随して報じました。
【写真】「中国が8ナノメートル製造プロセス用の露光装置を開発」 中国ポータルサイトに掲載されたブロガーの投稿
結果として、このニュースはとんでもない誤報でした。中国工業情報省が9月初めにウェブサイトに掲載した2024年版重要技術設備普及リストに掲載された中国製露光装置に対する技術指標を誤読したために起きたハプニングでした。米国など西側の強力な半導体制裁の中で何とか技術的自立を果たしたいという焦りに端を発する騒動とみられます。
中国国内では最近、「中国版エヌビディア」を自称していた人工知能(AI)半導体分野のユニコーン企業も相次いで崩壊しています。ものすごい技術を開発したかのようにうたい、資金を集めましたが、結果を出せずに倒産したり、証券市場から追放されたりしています。
■「技術の突破口」開いたというが…
ニュースの震源は、工業情報省の資料に含まれた中国製アルゴン・フッ素(Arf)露光装置に関する技術指標でした。そこに「解像度65ナノメートル以下、オーバーレイ精度8ナノメートル以下」という表現がありますが、「オーバーレイ精度8ナノメートル以下」の部分を8ナノメートル級の半導体製造が可能だという意味で誤認したのです。この装置は上海微電子装備(SMEE)という中国の国有半導体設備メーカーが開発したそうです。
露光装置は半導体ウエハー上にレーザーを照射し、ナノメートル単位の精密な回路を刻むものです。電子顕微鏡で見なければならないほど微細な回路です。解像度が最高65ナノメートルというのは、65ナノメートルの太さの回路を描けるという意味です。
オーバーレイ精度は、半導体ウエハー上に複数の層の回路を重ね合わせる際に登場する概念です。回路を重ね合わせて刻むときに、各層の回路が基準位置からどれだけずれているかを測定する値で、その誤差を8ナノメートルまで減らせるという意味です。
中国当局はこの設備の指標を公開し、「意味ある技術的な突破口を開いた」と主張しました。しかし、公開された指標から見ると、この設備は世界最高水準のメーカーであるオランダASMLが2009年に発売した「ツインスキャンXT:1460K」という初期のDUVモデルと仕様が似ています。ASMLの最新DUV装備は解像度が38ナノメートル以下、オーバーレイ精度は1.3ナノメートル以下に達するといいます。