サムスン電子の全永鉉(チョン・ヨンヒョン)副会長兼DS(半導体)事業部長が2024年第3四半期決算を発表した際に発表した謝罪文には、「サムスン電子危機論」の原因に関する見方が簡潔に整理されている。「技術の根源的競争力」と「将来への準備」の欠如、信頼が消えた組織文化だ。同社の謝罪文は反省文でもある。
■「技術の根源的競争力復元」
チョン副会長は謝罪文で「技術の根源的競争力を復元する」とし、「世の中にない新しい技術、完璧な品質競争力だけがサムスン電子が再び飛躍する唯一の道だ」とし、技術競争力の向上を第一の課題として掲げた。
現在サムスン電子の半導体が直面している最も現実的な問題は、歩留まり(素材の投入量から期待される生産量に対して、実際に生産できた製品の割合)だ。歩留まりは超微細工程ほど向上させることが難しいため、半導体メーカーの生産性、収益性、技術力を判断する指標となる。しかし、サムスン電子は第5世代DRAMの製造プロセス(1ベータDRAM)の歩留まり競争でSKハイニックスに押されていると評されている。このプロセスによって生産される「DDR5」などのメモリー半導体は人工知能(AI)データセンターの重要部材であり、今後大きな成長性を秘めている。サムスンはこの分野で競争力が劣っているのだ。次世代高帯域幅メモリー(HBM)などに使われる第6世代DRAM(1cDRAM)の量産にもSKハイニックスが先に成功した。半導体スタートアップ企業の経営者は「SKハイニックスは第6世代DRAMの歩留まりが60%とされるのに対し、サムスン電子はそれにはるかに及ばないと伝えられている。HBM、LPDDR(省電力DDR)、GDDR(グラフィックスDDR)などDRAM派生商品に使われる重要なDRAM製品の競争力が揺らいでいる」と述べた。
半導体業界はファウンドリー(受託生産)市場における台湾積体電路製造(TSMC)とサムスン電子のシェア格差も歩留まりが原因とみている。半導体の生産を委ねる顧客にとっては、少しでも歩留まりの高い業者に生産してもらわなければ、タイムリーに供給を受けることができない。半導体業界によると、TSMCは最先端の3ナノメートル製造プロセスによる歩留まりでサムスン電子を10ポイント以上リードしているという。市場調査会社トレンドフォースによると、今年第2四半期のファウンドリー市場におけるシェアはTSMCが62.3%、サムスン電子11.5%で、その差はさらに広がっている。
■「将来への備え徹底」
全副会長は「もっと徹底的に将来に備える」とし、「持っているものを守ろうというマインドではなく、より高い目標に向かって疾走するチャレンジ精神で再武装する」と表明した。フィナンシャルタイムズやウォールストリートジャーナルなどの海外メディアは、それをAI時代に遅れたことへの反省と受け止めた。