しかし、こんな発言を吹き飛ばすように、二つの事件を巡って中国のソーシャルメディアには依然として反日復讐をあおるコメントがあふれています。犯人らを「抗日英雄」と持ち上げるコメントもあるのです。
四川省農村エネルギー開発センターの副主任で甘孜州新竜県の副県長を兼ねる黄如一氏(41)は、微信のコメントで「幼い子どもを一人殺すことのどこが大事件か。数百人殺してもいい」「罪もない子どもを殺りくしたのではなく日本人を殺したのだ」「中国人の規律は日本人を殺すこと」と書き込みました。彼は四川大学で工学博士号を取った共産党のエリート中間幹部だといいます。
中国当局は、遅まきながら反日コメントの検閲に乗り出しました。ポータルサイトの騰訊、百度や動画プラットフォームのティックトック、快手などは「中日対立を扇動した」という理由でそれぞれ数百件のコメントを消し、アカウントを削除する措置を取ったと発表しました。
■海自の護衛艦、初めて台湾海峡を航行
日本は外交的対応に乗り出しました。 柘植芳文外務副大臣は9月23日に北京で中国外交部の孫衛東副部長と会談し、中国国内の日本人の安全と、ソーシャルメディア内の根拠なき反日扇動の取り締まりを要請しました。国連総会に出席するためニューヨークに向かった上川陽子外相も、王毅外相に事件の原因についての究明や安全措置などを要求しました。
9月25日には、海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」がオーストラリア、ニュージーランドの艦と共に台湾海峡を航行しました。自衛隊の艦艇が台湾海峡を航行するのは初めてです。
中国政府が守勢に立たされている様子は明らかです。蘇州の事件は発生から既に3カ月が経過し、日本政府が繰り返し公表を要請しているにもかかわらず、中国側は犯行の動機を隠し続けています。日本産の水産物輸入を再開すると決めるなど、対日融和策を打ち出していますが、局面の転換は容易ではない見込みです。
■日本企業の中国撤退、加速する見込み
日本企業は、現地駐在員や家族の帰国の支援に乗り出しました。パナソニックは一時帰国しようとする駐在員と家族の帰国費用を提供しており、東芝とトヨタは現地駐在員に対して安全に留意することを求める通知を送ったといいます。
一時は15万人に達していた中国居住日本人は、現在は10万人程度まで減りました。過去3年間で日本に戻ったり米国・インドなどに生産基地を移したりした日本企業も2000社近いといいます。三菱、ホンダ、ブリヂストンなどが続々と中国国内の工場を減らしたり、閉鎖したりしました。
今回の事件で日本企業の中国撤退は加速するものとみられます。金杉憲治・駐中日本大使は9月24日、大連市を訪問した際「深セン事件は両国関係に暗い影を落とした」とし「日本企業の対中ビジネスが重大な分岐点を迎えた」と語りました。
崔有植(チェ・ユシク)記者