米シンクタンク「中国はコロナ損失を賠償せよ」 その根拠とは

ヘリテージ財団・超党派委員会の報告書「新型コロナウイルス、武漢研究所から流出」

 一方で、この報告書は研究所からの流出説を支持しました。新型コロナ感染拡大の初期には野生動物を売る華南海鮮卸売市場の周辺で多数の患者が発生したため、ここから新型コロナウイルスが広がったとの見方が支配的でした。しかしその後の調査で、この市場では新型コロナウイルスが検出されなかったとされています。

 新型コロナウイルスの宿主といわれるキクガシラコウモリが生息する中国南西部・雲南省と華南海鮮卸売市場は1300キロ以上離れています。新型コロナウイルスがこのような遠距離を移動してヒトに感染するというのは不可能だというのがこの報告書の結論でした。

 委員会は、初期に武漢ウイルス研究所の周辺で患者が最も多く発生した点から、ウイルスが実験室から流出したと見ています。また、2019年11月に同研究所の研究員3人が感染し、病院で治療を受けたことも確認したとしています。委員会は、新型コロナウイルスを研究していたこの研究所が、バイオ・セーフティー・レベル2(BSL2=ヒト又は動物に健康被害を起こす可能性があるが重篤になる見込みがないもの)の劣悪な衛生環境で危険な研究作業を行っていたため、ウイルスが流出したと分析しました。ロバート・レッドフィールド米疾病予防管理センター(CDC)元所長は「2019年9月に武漢ウイルス研究所の管理権限が中国軍に移り、10年以上続けられていたコロナウイルス研究の記録が削除され、実験室の換気システムを大々的に交換する作業が行われた」として「これら3点が、実験室から流出したと判断する根拠」と述べました。

■無責任な初期対応が世界的大流行を引き起こした

 ヘリテージ財団は、中国が新型コロナウイルスの発生初期に発生の事実を隠し、十分な防疫措置を講じなかったことが世界的大流行を引き起こしたとの見方を示しました。現地の医療陣や記者、市民が感染症の発生を外部に漏らさないよう、徹底的に統制した上、新型コロナウイルスのゲノム(全遺伝情報)を公開することすら阻止したというのです。

 世界保健機関(WHO)の国際保健規則(IHR)は、感染症が発生した場合、各国は直ちに関連資料を収集してWHOに通報するよう定めています。中国はこの規則の署名国であるにもかかわらず、新型コロナの発生を即座にWHOに通報せず、隠蔽しました。さらに大きな問題は、感染症の発生から2カ月以上も、武漢から全世界に飛んでいる国際線の運航を止めず、世界各国に新型コロナウイルスをまき散らしたということです。中国の無責任かつ不透明な初期対応が、世界的な大流行へとつながったというのが報告書の結論です。

 委員会は米国政府と議会に対し、断固たる措置を求めました。ナチスのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)被害者に対する補償を主導した「ユダヤ・クレーム会議」、イラクのクウェート侵攻に伴う国際被害の賠償を主管した国連補償委員会などを例に挙げ、米議会による中国への損害賠償請求を可能にする「中国政府の新型コロナウイルス責任法」の立法を勧告しました。また、新型コロナウイルスを隠蔽した責任がある中国政府機関や企業などに対する強力な制裁なども求めました。

崔有植(チェ・ユシク)記者

【グラフィック】パンデミック第1週の患者数 「震源地」華南海鮮卸売市場より武漢ウイルス研究所周辺の方が多かった

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