偽物の手荷物ステッカーは全く意味のない代物だが、「本物」のスーツケースを危険に陥れる可能性もある。特に、小さな空港では荷物が誤った目的地に運ばれる確率が高くなるという。仁川国際空港公社の関係者は「手荷物を分類する際、一般的には『クレームタグ(スーツケースの持ち手に巻く長いタグ)』のバーコードを主に使うため、ステッカーは補助用ではあるが、一部の空港では二つを見比べるダブルチェックが行われている」「ステッカーが何枚も貼ってあるとシステムエラーを起こす可能性があるため、使用済みのステッカーはスーツケースから必ず剥がしておかなければならない」と話した。
空港は不特定多数の旅行者が行き交う空間であり、所持品で自分の水準を自慢したいという欲望を刺激する。最近、Z世代(1990年代半ばから2000年代前半生まれ)の間で「空港の保安検査台での携行品撮影」が流行しているのも、こうしたことが背景にある。保安検査の際、X線検査台に灰色のプラスチックトレーを置いてブランドバッグなどの高級アイテムをきれいに並べ、「認証ショット(証拠写真)」を撮ってSNS(主にTikTok)に投稿するのだ。小さなファッションショーのようなものだ。一部では「人生をキュレーション(情報やコンテンツを収集し、新たな価値を与えて共有すること)しようという欲求」であり「日常の芸術」と主張する声もある。この遊びが「空港トレーの美学」と呼ばれる理由だ。
混雑する場所で撮影に熱中する集団が増えていることから、不満の声も高まっている。「こうした行為によって飛行機に乗り遅れる人が出てくるかもしれない」(米ニューヨーク・ポスト)、「空港で最も恨まれる人になりかねない不安なトレンド」(英メトロ)などの指摘もでている。ネットでは「あまりにも物質主義的な光景だ」「早朝5時に財布やリップグロスなどを丁寧に並べるために保安検査台の前をふさいでいる人がいたら、こちらは気が狂いそうだ」「ジョン・F・ケネディ空港でこんなことをしていたらテーザー銃で撃たれるかも」などの意見が見られた。
チョン・サンヒョク記者