■インド国内でも「国際競争力低下」に懸念の声
インドは製造業育成政策である「メイク・イン・インディア」でさまざまな優遇策を掲げ、多国籍企業を誘致した。韓国も1980年から2023年までの期間に累計106億3000万を投資し、対インド投資国で13位となった。現地進出企業関係者は「多国籍企業がインドに投資したのは、低賃金と豊富な労働力、巨大な内需市場に魅力があったからだ。今のように大規模な労使紛争が続き、賃金が急激に上がれば、投資誘因が低下することになる」と話した。
サムスンだけでなく、既に数多くの多国籍企業は強硬な労組に苦しめられている。現代自動車には2007年、CITU系の非公式労組が設立された。その後、賃上げと解雇労働者の復職などを要求し、2010年に生産ラインが占拠され、2012年と2019年のストに続き今年7月にも操業拒否が発生した。収益性がないとして現地から撤退したGMの工場を買収する際も、GM労組が追加補償を要求し、契約が難航した。
鉄鋼大手ポスコのマハラシュトラ工場は2021年、賃上げ、地域住民の採用要求で混乱した。従業員らは工場への出入りや物品搬入を妨害し、自動車用鉄鋼生産に支障が生じた。チェンナイにあるロッテのチョコパイ工場でも昨年4月から7月まで賃上げなどを求め、数カ月間にわたるストが起きた。 日本のヤマハ、アップル用充電器を生産する米フレックスなど多くの企業も賃上げ、労組認定などの問題でストをはじめとする労使対立を経験した。現地業者関係者は「インドは地方政府の力が強く、中央政府による統制が難しい。地方政府も選挙の票を意識し、企業より労働者を支持する場合が多い。韓国だけでなく、各国の企業も労組対立に最も苦労している」と語った。
インド現地でも懸念の声がある。現地経済誌フィナンシャル・エクスプレスは「インドの電子製造業が根付き始めた時期に発生した産業不安は多国籍企業に悪いシグナルを送るものだ」と評した。インドのシンクタンク、グローバル・トレード・リサーチ・イニシアチブ(GTRI)も「労組のスト問題で世界の製造業大国になろうとするインドの野望が危機に直面した。インド国内の雇用が減少し、製造業の主導権が中国に渡る恐れがある」と指摘した。
パク・スチャン記者、ソン・ユジン記者