■合同演習パートナーのタイはグリペンに決定
親中・親ロ路線を歩むセルビアがJ10Cではなくラファールを選択するに当たっては、政治的な理由も作用したものとみられます。セルビアは09年に欧州連合(EU)加盟を申請しましたが、コソボ紛争、国内の民主主義および法治問題などにより、加盟手続きに進展がない状態です。こうした状況でEUの盟主であるフランスの助けを得るため、戦略的にラファールを選んだという分析がなされています。
親中路線を歩んできたタイがJ10Cではなくスウェーデンのグリペン戦闘機を選んだことも、中国としては痛いところです。中国とタイは15年から毎年、合同空軍演習を行ってきていますが、中国は数年前からJ10Cをこの合同演習に投入してきました。タイが1980年代に配備した古いF16に代わる戦闘機の導入を始めたことを受け、J10Cの販促に乗り出したのです。
今回の受注戦では、米国ロッキード・マーチンのF16V、スウェーデンのグリペン、中国のJ10Cが競争しましたが、タイはJAS39グリペン戦闘機に決めました。J10Cは昨年のサウジアラビア受注戦でも、フランスのラファール相手に苦杯を喫しました。
■ジェットエンジンの性能、信頼性が低いJ10シリーズ
今のところJ10戦闘機を購入した海外の国は、中国が「鉄盟」に挙げるパキスタンが唯一です。計36機を販売することとし、このうち10機ほどを引き渡しました。
中国の戦闘機が世界の舞台で敬遠されるのには、幾つか理由がありますが、最も大きいのはやはり中国製ジェットエンジン(WS10/渦扇10)の性能と信頼性の問題です。以前より出力は上がりましたが、出力の持続性、燃料効率などの側面で問題があるといいます。
6トンに満たない武装搭載量も問題だといいます。多目的戦闘機であるためには、さまざまな武装を搭載できなければなりませんが、搭載量が少ないと制限を受けることは避けられません。追加の燃料タンクがなく、作戦距離は短いといいます。F15とF16、J10Cに乗ったことのあるパキスタン空軍のパイロットは、ある軍事専門誌への寄稿記事で「レーダーの探知能力も良く、機動性も悪くない方だが、武装の搭載量が少なく、出力が急に落ちる問題がある」として「もっと強いエンジンに交換しないと問題は解決できないだろう」と指摘しました。
崔有植(チェ・ユシク)記者