デジタル文明時代は広告をしない。イーロン・マスクはテレビコマーシャルを一つもやらずにテスラを世界的なブランドにつくり上げたが、それはひたすらソーシャルメディアを通して企業を紹介し、新製品を披露しただけだった。彼の言う通り、広告は「車に乗ってみた顧客がユーチューブに自らアップロードしたものが本物」な時代だ。
欧州の市民が韓国の戦闘機を買い、原発を買うのは、韓国を先進国として認めていることを意味する。ポーランド、ノルウェーの国民にテレビで広告を一度も流すことなく形成したファンダムのおかげだ。文化の超一流化にこだわってきたコンテンツ専門家と製造の超一流化にこだわってきた韓国のエンジニアが力を合わせてつくった奇跡の成果だ。先端産業においても、注目に値する成長を遂げた。昨年スイスの国際経営開発研究所(IMD)が64カ国を対象に評価した「デジタル競争力ランキング」において、韓国は世界6位だった。
デジタル文明は国境なきファンダム経済が支配する世界だ。韓国の文化と韓国の商品を経験した世界の人々が自らKファンダムをつくり、コリアを先進国として認知するようになったのだ。こうした奇跡をつくった英雄たちがまさに、世代に関係なく一生懸命生きてきた韓国の普通の人々だ。
デジタル文明はまた、人工知能(AI)文明へと転換する巨大なうねりを起こし始めた。金融街では、2000年のドットコム・バブル以降、最も多くの資本が一つの技術テーマに流れ込む現象だと分析している。あのときインターネットに殺到した資本が、今のデジタル文明をつくった主人公だ。そして再びAIというテーマに集まった巨大な資本は、今やAI文明時代を開くエネルギーになるであろうことは明らかだ。
韓国はドットコム・バブル時代に賢く世渡りして、急速にデジタル転換を実現できた。今回のAI大転換も、うまくやらねばならない。既に韓国国会でも、AI関連のフォーラムが四つもつくられたという。ところが、AIがつくる未来についていかなる議論も、政策もまだ聞いたことがない。AI支援どころか、ひたすら政治争いに終始している上に、国民に小遣いをやろうという支援金論争で騒々しい。どの国会議員も、未来のためにAI産業を支援しようという特別法一つ出さない。
デジタル文明世界は韓国を先進国として認知しているのに、韓国の政界は途上国時代の権力争いに命を懸けている。奇跡をつくった韓国の普通の人々も覚醒すべきだ。国民がまさに権力であり、英雄である国が韓国だ。どのみち未来も、そういうふうに準備しなければならない。
崔在鵬(チェ・ジェボン)成均館大学機械工学部教授