「戒厳令シーズン1」を覚えていらっしゃいますか【朝鮮日報コラム】

 韓国で、2017年の「戒厳令シーズン1」に続き、最近「戒厳令シーズン2」が開幕した。進歩(革新)系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は最近、「国会議員を戒厳宣布と同時に逮捕・拘束しようという計画を組んだ」という話までした。民主党の最高委員や首席最高委員に続いて、党代表まで登場して「戒厳令デマのビルドアップ(築き上げること)」に乗り出しているのだ。

【グラフィック】共に民主党の「戒厳令」主張の真偽

 「戒厳令シーズン1」を振り返ってみよう。文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領弾劾の局面で機務司令部(機務司。当時の韓国軍情報部隊)が戒厳検討文書を作った事実が明らかになったとして、全方位的な捜査に入った。民・軍合同で検事およそ30人から成る合同捜査団が104日間、軍の主要ポストの現職・元職の人物およそ200人を取り調べた。当時、張駿圭(チャン・ジュンギュ)陸軍参謀総長はもちろん首都防衛司令官、前方部隊の師団長、空輸旅団長を取り調べ、機務司を対象に複数回の家宅捜索を実施した。ところがただの一人として、内乱陰謀・クーデターの罪で起訴することはできなかった。

 当時、文在寅政権は、捜査とは別途に機務司を「解編」した。機務司を「解体に準ずるレベルで根本的に再編する」という意味で出て来た表現だ。そうしてつくられた軍事安保支援司令部は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権において防諜(ぼうちょう)司令部に名前を変えた。前政権で防諜能力や組織が大幅に弱体化したという判断からだった。

 何があったのだろうか。韓国軍によると、機務司が解編される中で部隊の定員の30%に当たる1200人が削減された。1200人が削減されて原隊復帰した後、原隊復帰者のうち2人は極度のストレスに苦しみ、自ら命を絶った。

 減らされた1200人のうち、防諜・保安の専門人材は700人に上ったという。国家保安法違反者の検挙実績は急減した。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権12人、李明博(イ・ミョンバク)政権45人、朴槿恵政権20人から、文在寅政権では「0人」になった。最近、韓国の対北偵察の中心的アセット(軍事資産)である白頭・金剛偵察機関連の技術資料がハッキングされ、インドネシアから派遣されたエンジニアが韓国製超音速戦闘機KF21の機密を盗んだ。このような防衛産業関連の防諜の緩みも、やはり機務司解編の過程で起きた防諜能力弱体化のせいだ-という見方が韓国軍内部には広く存在する。

 防諜能力の弱体化に続いて、韓国軍の綱紀の緩みも起きた。機務司が軍事安保支援司令部に変わる過程で、情報司令部(ヒューミント〈人的情報〉担当)と777司令部(シギント〈信号情報〉担当)に対する外部監査権が2018年から消えたことに伴うものだ。当時、政権の指示で機務司を縮小した際、これらの部隊に対する監査権を制限したという。外部監査を受けなくなった情報司令部と777司令部では、事件・事故が続いた。情報司令部では軍属がブラック要員の情報を漏らし、司令官と旅団長が互いに相手を告訴・告発する争いが噴出した。777司令部では、除隊(予備役へ転役)まであと1カ月に迫った兵長が死亡する事件が起きたが、最近まで伏せられていた。

 「戒厳令シーズン1」はこうして終わった。今幕を開けた「戒厳令シーズン2」が、野党側の狙い通り無事に最終回を迎えた場合、どういう事態が起きるだろうか。その場合、最も大きな恩恵を受けるのは敵国だろう…という思いは杞憂(きゆう)だろうか。

ヤン・ジホ記者

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