ゲオルギューの「突発的行動」は今回が初めてではない。2016年にオーストリアのウィーン国立オペラ劇場でも偶然だが同じオペラ『トスカ』で同じアリア『星は光りぬ』をテノールのヨナス・カウフマンがアンコールでもう一度歌うと、これに抗議して退場し、しばらく公演を遅延させた。音楽評論家のチャン・イルボム氏は「かつてオペラのディーバは鼻が高く、公演のために劇場のあらゆる人々が持ち上げてやらなければならない存在だったが、今はかなり時代錯誤的だ。公演中に聴衆の前で何かをコメントするのは大人げない態度だった」と指摘した。
ゲオルギューは以前にも演出の方向性や衣装、リハーサル不参加といった問題で欧米のオペラ劇場と頻繁に衝突を起こしてきた。1997年の米メトロポリタン歌劇場(MET)日本公演ではオペラ『カルメン』で「金髪のかつらをかぶってほしい」という演出家の指示に反発した。結局、出演者交代というMET側の超強硬手段でゲオルギューは次の公演からかつらをかぶるようになったものの、「その上にずきんをかぶって出てきた」と外信が報じた。2007年にも米シカゴ・リリック・オペラ劇場で『ラ・ボエーム』にキャスティングされたが、リハーサル不参加などを理由に降板となった。
ゲオルギューは自身のはばかることのない発言と性格について「ルーマニアのチャウシェスク共産独裁政権下で育ったため」と2007年に英紙タイムズとのインタビューで語っている。ゲオルギューはこのインタビューで「意見が持てない国で育ったため、今はかえって強くなった。他の声楽家たちは『意見を率直に言えば劇場から二度と声がかからなくなるのでは』と恐れているが、私はある面では革命的な勇気を持っている。大衆音楽が肉体のためのものだとしたら、オペラは精神のためのものだ。私はオペラのために闘う」と語った。
金成炫(キム・ソンヒョン)文化専門記者