改めて甲子園を見てみよう。全国各地でこれほど多くの高校チームが激しい予選を勝ち抜いて甲子園にやって来る。そのため甲子園で高校野球が行われる8月は誰もが地元都道府県の応援団になる。実際に今回京都国際高校を応援するためやって来た京都府内の近隣高校の生徒や父兄らによる熱心な応援の風景もカメラで何度も撮影された。選手たちだけのリーグではなく、「日本全国のお祭り」になるのだ。祭りだから、試合で勝つことは一つのボーナスに過ぎない。
チームスポーツはその言葉通りチームで何かを経験する場となる。若い時期に大小さまざまなチームに所属し、共に試合に臨むことは自らの身体能力を高めること以上の意味合いがある。協働や配慮など社会性を育む機会になるのはもちろん、勝利の喜びと敗北の悔しさ、応援ややじから来る安心感や挫折、高い技量から得られる自尊心と能力の低さから来る劣等感、またこれらの感情をコントロールする大切な機会にもなる。しかも自分のチームに対してだけではなく、相手チームの立場や思いに配慮できる共感力を育む場にもなっている。
子どもの時に「遊び」を経験できなかった子どもは、大人になると情緒面で深刻な問題を抱えるという研究も数多くある。遊びは感情の起伏を経験し、それをコントロールする行為でもあるからだ。高校生の時期は身体面では活力もホルモン分泌も旺盛で、認知面でも柔軟な時期だ。この大切な時期に「入試にプラスにならない」という理由でチームスポーツをやらせず、競走馬のように一人で勉強ばかりさせる韓国の大人たちは頭がおかしいのではないか。運動を続けると認知能力や学習能力が向上し、ストレスが緩和され抗うつ効果も高まる。これらの事実から考えると、大人たちの考えはひどい過ちであり、しかも子どもたちを間違った方向に導く深刻な犯罪になってはいないか。
『GO WILD 野生の体を取り戻せ!』『脳を鍛えるには運動しかない!』などの著書で知られるハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ教授は、高校の0時間目の体育が生徒たちの学習能力向上と脳の構造改善にプラスに働く事実を解明し、運動が身体はもちろん、脳をも健康にすると力説している。この事実に深く共感する韓国のある自立型私立高校の校長が学校の教育理念を「体知徳」とし、全校生徒に朝から運動をやらせたが、わずか数日後に父兄からの激しい反対で取りやめた話も伝わってきた。人生で運動がいかに重要か理解している親たちでさえ、この反対に加わったという韓国の現実はあまりにも現実離れしている。
張大翼(チャン・デイク)嘉泉大学創業学部碩座(せきざ)教授・進化学