1950年12月、興南の埠頭(ふとう)で数万人の避難民の命を救った米海軍の輸送艦「メレディス・ビクトリー」は、米国の「造船王」ヘンリー・ジョン・カイザーが第2次大戦時に計3800隻も作った「リバティー」輸送艦の1隻だった(ママ)。フーバー・ダムの建設にも参加した建設業者カイザーは、船舶の建造法を革新し、1隻当たりの建造時間を355日から17日に短縮した。記録更新のために、試験的にわずか4日と15時間でリバティー船を1隻完成させたこともあった。
カイザーの革新は大きく分けて二つあった。船を作る際、まず竜骨を据えてそこに木や鉄板を取り付けていくというやり方を捨て、船のパーツを構成するブロックを工場であらかじめ作り、それを造船所に持っていって最終組み立てした。もう一つは、リベット(きのこ型のくぎ)で鉄板を接合するのではなく、溶接を採択したことだ。彼の造船所があまりにも速いスピードで船を作り出すことから、カイザーには「ローンチ・ア・ロット(Launch a lot. 大量進水)卿」という別名が付いた。
造船大国の米国は、1920年に制定したジョーンズ法(Jones Act)でおかしくなり始めた。この法律は、米国で作った船だけが米国の港から他の港へ荷物を運ぶことができる、と定めていた。米国の造船会社に、自国の船舶の独占権を与えたのだ。競争力が消えてしまうのは避けられなかった。日本の造船所が60年代から米国の造船会社を追い越し始めた。現在、米国では事実上、航空母艦・駆逐艦・潜水艦など軍艦の建造だけが行われているが、生産性に関してはお寒い限りだ。
米国造船業の没落は、世界の安全保障の構図に激変を引き起こしている。米国の世界覇権を支える米海軍が、数段も格下に見ていた中国海軍に押される危機にある。中国の船舶建造能力は世界トップだ。空母の数は11対3で米国が依然として優位にあるが、戦闘艦の数は370隻対280隻で中国に逆転された。米国のシンクタンクが「韓国・日本の造船会社に早くSOSを出すべき」とアドバイスし、上院議員らがバイデン大統領に対策を求める書簡を送った。
今年2月に米海軍省の長官が韓国の造船所を訪れ、「ワンダフル」を連発して戻っていったが、8月29日に喜ばしいニュースが伝えられた。ハンファ・オーシャンが米海軍の艦艇装備の1号契約を取ったのだ。将来、韓国の造船所のドックで米空母を見ることになる日が来ることもあり得る。米海軍の艦艇MRO(維持・補修)事業の規模は年間20兆ウォン(現在のレートで約2兆2000億円)に達する。実績を積めば、米海軍が軍艦の建造を韓国に任せる日が来るかもしれない。米軍の軍艦に避難民を運んでもらうありさまだった韓国が、74年を経て、米国が海軍力を維持する上でなくてはならない中心的な支援国に挙げられるようになった。
キム・ホンス論説委員