韓国政府の気候対策は「違憲」 31年以降の目標示さず=アジア初の司法判断 

【ソウル聯合ニュース】韓国の憲法裁判所は29日、韓国政府が2031年以降の温室効果ガス排出量の削減目標を定めていないのは憲法に違反するとの判断を裁判官9人の全員一致で下した。青少年や市民団体などが政府の目標は憲法上の基本権を保障しておらず、違憲だとして訴訟4件を起こしていた。憲法裁は政府の気候変動への対応が不十分な場合、環境権など国民の基本権の侵害につながりかねないと認めたことになる。原告側などによると、このような司法判断はアジアで初めてという。

 憲法裁に判断が求められたのは、炭素中立基本法や同法の施行令が憲法に違反していないか、また国家基本計画などで定めた温室効果ガスの削減目標が適正であるかどうかなど。 

 憲法裁は政府が関連法に31年から49年までの削減目標を提示していないのは、基本権の保護義務に違反するもので、請求人の環境権を侵害すると指摘した。

 政府は21年10月、韓国の30年までの温室効果ガス削減目標を18年比40%減に引き上げると発表したが、それ以降については目標を示していない。 

 憲法裁はまず「国の気候危機に対する対応の義務も国と国民が『環境保全』のために努力する義務に含まれる」とし「削減目標の設定が未来に過重な負担を与えない方式で、また削減が実効的に担保される方式で制度化されているかなどを科学的事実と国際基準を考慮して判断しなければならない」との前提を示した。そのうえで政府が掲げる50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標は、持続的な削減を実効的に担保できる装置がなく、未来に過重な負担を与えるなどと指摘した。

 また気候変動の性質上、未来の負担を重くしないためには意欲的に削減目標を定め、進展させなければならないとし、「31年以降の期間についてもおおよその内容は法律で直接規定しなければならない」とした。

 違憲の判断が示されたことで、政府は26年2月28日までに気候変動対策を強化する形で関連法を改正しなければならなくなった。

 ただ憲法裁は政府が設定した30年までの削減目標については、国民の基本権を侵害していないと判断。30年までの削減目標は、50年までの漸進的かつ持続的な削減を前提にした中間目標であるとし、その数値だけを理由に未来に過重な負担を与えるとは断定しがたいと説明した。

 青少年らによる市民団体「青少年気候行動」は20年3月、政府が定めた温室効果ガス削減目標を巡り、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」で掲げられた産業革命以前からの気温上昇を1.5度に抑える目標の実現ができないとし、目標の不履行は未来世代が劣悪な環境で暮らすだけでなく、過重な温室効果ガス削減の負担を背負いかねないため、国が憲法上の環境権、生命権など基本権を保障しておらず、違憲だとして提訴していた。

 一方、政府側は「温室効果ガス排出量40%削減は、従来の目標を大幅に引き上げたものであり、製造業中心の経済構造や産業界の負担、韓国が主要先進国より温室効果ガス排出量のピークが遅れた点などを踏まえれば、削減幅は十分だ」と反論していた。

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