敵意は政治的な言動をつくり上げる際に有効だ。言い方を変えれば「商売になる」ということだ。ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を正当化するため「ナチス掃討」というストーリーを作り、これを悪用するのも同じパターンだ。「ウクライナをナチスの圧政から救わねばならない」というプーチン大統領の主張は、ウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ人という事実から考えてもおかしい。しかしこの種の主張はうまくはまればそれでよく、証拠などの類いは重要ではない。これと同じように機能しているのが実は韓国の政界における反日だ。
かつて「反日」「反米」「反独裁」は左派政治家がよく使う三種の神器だった。16年前「米国産牛肉を食べれば狂牛病で脳に穴が開く」と扇動し反米がうまくはまった。ところがその後米国産牛肉を誰もがよく食べ、米国に子供を留学させる政治家も多くなるとその効果は失われた。独裁を批判する機会も最近はすっかりなくなった。最後に一つだけ残ったのが反日だ。三つの中で最も歴史が長く、植民地時代の記憶も深く刻まれているので、反日の寿命は簡単には尽きないだろう。その間に職業反日活動家が政界にも徐々に数多く進出するようになった。慰安婦被害者を支援するという「正義記憶連帯」を立ち上げた尹美香(ユン・ミヒャン)元議員は寄付金を横領し、何度も有罪判決を受けたが、それでも今なお反日関連の本を書き講演も続けている。
韓国の一般国民は経済や文化のレベルに合わせて成熟しつつある。「福島汚染水は毒劇物」といったデマや扇動に対しても、狂牛病の時のように興奮して通りに飛び出すようなこともなかった。科学的な常識をより信じたからだ。日本文化は文化として、スポーツはスポーツとして楽しめるようになった。国の成長と共に、国民は今後もさらに成熟していくだろう。しかし一部の政治家だけが今も反日にまい進して生きている。表現の自由が保障された国なので、もちろん何を言っても自由だ。しかし現実と懸け離れた反日立法や反日政治活動に私の払った税金が使われるとすれば、それはやはりもったいない。
キム・シンヨン国際部長