日本の岐阜県にある飛騨古川駅は、一日の利用客が400人にも満たない田舎の駅だ。ところが、2017年に韓国だけで370万人を動員したアニメ映画『君の名は。』のヒット以降、韓国と台湾の観光客らが訪れるようになった。映画に出てくる駅舎、飲食店、図書館などを巡りながら、映画のシーンと自分の撮った写真を比べるための「認証ショット(証拠写真)」も撮影する。飲食店の中には「巡礼の感想をノートに書き残してください」と書かれたノートと映画のポスターが設置されている店もある。好きなドラマや映画のロケ地を巡るカルチャーを、マニアたちは「聖地巡礼」と呼ぶ。
【写真】海外ファンの「SLAM DUNK聖地巡礼」 相次ぐマナー違反に頭を抱える鎌倉市
漫画『SLAM DUNK(スラムダンク)』のファンにとっては、神奈川県の鎌倉も聖地だ。鎌倉は鎌倉時代の文化遺産として有名な場所だが、いつしかスラムダンクがこの地の文化遺産になった。プクサン高校(原作は湘北高校)バスケ部の選手たちが通学に使っていた「江ノ電」という古い電車に乗り、カン・ベクホ(桜木花道)とソ・テウン(流川楓)が走っていた江の島の海辺を歩きながら追憶に浸る。漫画に登場する電車の踏切は、「認証ショット」を撮りたい外国人観光客が殺到するため危険行為防止の看板まで設置されている。
大統領を含め、中高年層をグルメの道に引き入れた日本のテレビ番組『孤独のグルメ』の飲食店も、韓国の観光客にとっての聖地巡礼スポットだ。町外れの簡素な食堂でも韓国人観光客が行列を作る。主人公が韓国ロケで訪れた釜山と全州のナッコプセ(タコのピリ辛炒め)、チョングッチャン(納豆汁)の店も話題だ。このあたりの分野までならおじさんたちにも理解できる。しかし、『ラブライブ!』『【推しの子】』のように少女アイドルが登場する漫画になると、巡礼が難しくなる。
韓国・春川の南怡島では昨年、日本人約60人が参加する「韓国旅行」クイズ大会が開催された。南怡島は2003年に日本で放送されてシンドロームを巻き起こした韓国ドラマ『冬のソナタ』のロケ地だ。「韓流20周年」を記念して開催されたこのクイズ大会には、K-POP、料理、ドラマ、観光地など20のテーマから問題が出題された。1位になった50代の日本人女性は、10年前に韓国を初めて訪れ、今回が39回目の訪問だったという。「ヨン様」のファンになったのが始まりで、今はBTS(防弾少年団)のファン「ARMY(アーミー)」になっている。
BTSやNewJeansなど韓流ブームの影響で、日本人の韓国での聖地巡礼も急増している。ガールズグループのマニアだった韓国の大学生は、外国人向けの「聖地巡礼」旅行会社を設立した。BTSツアーには、聖地とされるワールドカップ大橋、鶴洞公園、メンバーたちが通っていたという飲食店まで含まれている。最近では、ドラマ『ソンジェ背負って走れ』や『涙の女王』のロケ地ツアーもある。ツアーのコースには、水原華城、竜山(ソウル市)のバッティングセンター、忠清北道槐山郡のセマウル会館(地域のコミュニティースペース)が含まれる。日本人の参加者は「行く先々で興奮を抑えるのが大変だった」とコメント欄に書き込んだ。日本の山奥から韓国の地方のセマウル会館まで、両国の旅行客による聖地巡礼は拡大中だ。
鄭佑相(チョン・ウサン)記者