国内外の製薬会社が開発した新薬が、低い薬価のせいで容易には韓国市場に参入できず、導入までの所要時間も長く、患者の不利益が大きくなっている。米国研究製薬工業協会(PhRMA)によると、世界で開発される新薬が保険給付の適用を受けるまでにかかる期間は韓国が46カ月で、米国(4カ月)の11倍、日本(17カ月)の2倍以上だ。新薬が1年以内に導入される割合も5%で、OECD平均(18%)に遠く及ばない。新薬を冷遇する政策は世界的な製薬大手だけでなく、韓国製薬会社までもが国内市場を無視するという皮肉な結果を招いていると指摘されている。
セノバメイトの韓国での発売は2026年以降になる見通しだ。SKバイオファームはライセンス契約を結んだ東亜STを通じ、2026年に健康保険給付対象となることを目指す。
■韓国政府はさらに薬価を引き下げるのか
韓国国内で販売されていない国産新薬はセノバメイトだけではない。東亜STが開発し、2014年6月にFDAの承認を受けたスーパー抗生物質「シベックストロ」も昨年全世界で4460万ドル(約66億円)売り上げるなど販売が好調だ。韓国国内でも2015年に食品医薬品安全処(食薬処)から販売許可を受け、健康保険給付対象にもなったが、2020年に承認を自主的に返上した。国内薬価が米国の3分の1に設定されたため、韓国市場から撤退してしまったのだ。SKバイオファームの睡眠障害新薬である「スノシ」も国内での発売計画がない。
製薬業界は韓国政府が推進中の「外国薬価比較再評価」制度に対する懸念も大きい。同制度は韓国国内で流通する医薬品2万2920品目の価格を主要8カ国を基準に引き下げる制度だ。制度の主な対象が韓国製薬業界の主な収益源であるジェネリック医薬品(後発医薬品)であるため、研究開発投資を萎縮させる可能性も指摘されている。業界関係者は「他国の薬価と比べ、国内での医薬品価格を適正な水準に調整するという趣旨だが、結局は薬価を引き下げるということだ」とし「世界の製薬会社のコリアパッシングがより激しくなり、収益性低下で新薬の研究開発環境も悪化が懸念される」と話した。
パク・チミン記者