専門家らは、狂牛病(牛海綿状脳症、BSE)騒動の時とは異なり今回は韓国社会がデマにうまく対処したと評価する。狂牛病騒動の時は「米国産の牛肉を食べると『脳がスカスカになる』」といったデマが広がり、米国産牛肉の輸入が禁止されるなど、3兆7000億ウォン(韓国経済研究院推定)の被害が出た。しかし今回、科学界は福島の海洋放出について「安全上の問題はない」という意見で一致した。国際原子力機関(IAEA)が放出1カ月前の昨年7月、「日本の海洋放出計画は国際的な安全基準を順守している」という結論を出し、韓国の原子力学界の専門家たちもさまざまなデマに対して積極的に反論した。韓国政府も連日のように関連ブリーフィングを行うなど、迅速な対応によってデマの拡散を阻止した。
■3年間で血税1.5兆ウォンを投入
しかし、これには代償が伴った。水産物の安全性検査とさまざまな消費促進イベントのために、3年間で1兆5000億ウォン以上の国の資金が投入されたのだ。海洋水産部は2021年、日本が汚染処理水の海洋放出計画を発表すると、22年に2997億ウォン(執行額基準)、昨年は5240億ウォンの「対応予算」を投入した。今年の編成額(7319億ウォン)まで合わせると、3年間で1兆5556億ウォンに達する。安全性検査の費用を除いた90%以上は水産物の消費促進と漁業関係者の経営安定資金として使われたが、これはデマが出回らなければ必要のなかった資金だ。昨年6月に「汚染処理水が放出されればトリチウムによって天日塩が汚染される」というデマが拡散されて天日塩の買いだめが起きたことから、韓国政府がこの予算を使って天日塩を公的に買い上げたのだ。
日本による汚染処理水の海洋放出は2051年まで約30年間続く。専門家らは、デマが広がる余地がないよう検査や国民への広報など科学的な「事実」を強調した対応を続けるべきだとアドバイスする。ソウル大学地球環境科学部の趙暘基(チョ・ヤンギ)教授は「汚染処理水が通過するルートを定期的に検査して国民に結果を知らせるなど、国民の不安を軽減するための取り組みを強化しなければならない」と指摘した。
カン・ウリャン記者、クォン・スンワン記者