タイのテコンドーの女王は2連覇が確定するや、「やり遂げた」という表情で両腕を突き上げてジャンプし、叫んだ。そしてすぐに監督のところに駆けつけ、抱き合ってタイの国旗を広げた。その後、選手はマットに突然ひざまずいて、監督の前でひれ伏した。監督も選手の頭をなでながら、互いに敬意を表した。会場で繰り広げられた師弟愛に観客たちは熱い拍手を送った。
【写真】タイに大会初の金 韓国式のお辞儀をするパニパック・ウォンパッタナキット
パニパック・ウォンパッタナキット(27)=タイ=は7日(現地時間)、フランス・パリのグラン・パレで行われた2024年パリ五輪テコンドー女子49キロ級決勝戦で、郭清(24)=中国=をラウンドスコア2-1(6-3、2-3、6-2)で破った。1997年8月8日生まれのウォンパッタナキットは誕生日の前日に金メダル獲得という快挙を成し遂げた。2020年(2021年開催)東京五輪でタイに初めてテコンドーの金メダルをもたらした彼女は、タイ・スポーツ史上初となる五輪2連覇を達成した。東京五輪におけるウォンパッタナキットの金メダルはタイが取った「唯一の」金メダルだったが、今回の金メダルはタイがパリ五輪で取った「最初の」金メダルとして記録された。
ウォンパッタナキットはタイにおけるテコンドーの女王であり、先駆者とされている。7歳の時、父親の勧めでテコンドーを始めた。テコンドーが五輪の正式種目に採用(2000年シドニー五輪)されて間もないころのことで、このころからひそかに五輪出場という夢を抱いてきた。小さいころは陸上・水泳・バレーボールなど種目を問わず楽しんだが、結局は他より競争力があると判断し、最も愛着のあるテコンドーに集中することにした。そうした中、約13年前にチェ・ヨンソク監督に出会った。チェ・ヨンソク監督は2002年からタイ代表チームを率い、タイをテコンドー強国の仲間入りさせた。寅(とら)年に生まれ、選手たちに厳しく指導したことから「タイガー・チェ」と呼ばれた同監督が赴任して以降、タイは各国際大会で相次いでメダルを獲得するようになった。
2016年リオデジャネイロ五輪では銅メダルを獲得したウォンパッタナキットは、その後の大会で表彰台の一番上に立ち、チェ・ヨンソク監督の「一番弟子」になった。同監督は東京五輪後にその功労を認められ、当時の首相からタイのスポーツ最高指導者賞を贈られた。そして2022年に「チャチャイ・チェ」という名前でタイ国籍を取得した。韓国出身の監督と苦楽を共にしたウォンパッタナキットは韓国文化にも親しみを感じているという。韓国のスポーツ選手の中ではバレーボール元代表選手のキム・ヨンギョン(36)が一番好きだそうだ。
現役生活を通してのウォンパッタナキットの哲学は「夢ばかり見ないで動け。その後の結果は気にするな」だ。全力を尽くして臨んだ2016年のリオ五輪後は一時、引退も考えたが、チェ・ヨンソク監督が説得してここまで来たという。ウォンパッタナキットは同日、現役引退を宣言した。「タイに勝利の知らせを届けることができて、とてもうれしいです。ですが、膝・足首・腰の問題などでこれ以上、前へ進むことはできなさそうです。タイに私のテコンドー道場があります。皆さん、テコンドーを習いに来てください!」
パク・カンヒョン記者