SNS中毒にさせるための脳科学研究【萬物相】

 およそ10年前と比較すると、明らかに動きが増えた身体の部位がある。親指だ。朝の起床直後から就寝直前の深夜まで、親指は休むことなく仕事をする。スマートフォンの画面を上下、左右に押して回ることに忙しい。昨年、英国の研究陣が調査したところによると、1カ月の間にスマートフォンの画面を動かす「スクロール移動」を距離に換算してみたところ、1人当たり平均396メートルに達した。エッフェル塔の高さ(330メートル)を上回る数字だ。

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 フェイスブックをはじめソーシャルメディアのアプリには「底」がない。どれほど下に行っても掲示物(フィード)が続く「無限スクロール」として設計したからだ。これについて脳科学者らは、カジノに時計と窓がないのと同じ理由だ、と指摘している。ギャンブルにのみ没頭するよう設計されたカジノと同じく、ソーシャルメディアのアプリも、ユーザーが抜け出せない「わな」をあちこちに隠していたのだ。

 行動心理学者のバラス・スキナーが行った実験の中で、空腹のネズミを箱の中に入れておき、毎回同じ報酬を与える場合と無作為に与える場合とを比較したものが有名だ。レバーを押すたびに同じ餌が出てくる場合よりも、何も出なかったりたくさん出たりするなど、毎回結果が違っていた場合の方が、はるかにネズミを興奮させた。無作為報酬のときの方が、快楽と関連する神経伝達物質「ドーパミン」が旺盛に分泌されるからだ。カジノで、客は結果を期待しつつスロットマシンのレバーを引くときに最も胸が高鳴るという。「可変的(無作為)報酬」はギャンブルの強力な中毒性を説明することに用いられる。

 これを適用してソーシャルメディア各社が出している機能が「更新(refresh)」だ。スロットマシンのレバーを引くときのように、スマートフォンのボタンを押したりスクロールさせたりするたった一度の動作によって画面が新たな掲示物にさっと変わることが、さらに大きな期待と満足感を与える-という話だ。ユーザーの書き込みに付く「いいね」のお知らせが遅くポップアップするようにあえて遅延させているのも、相手が返答コメント入力中であることを示す機能も、結局はアプリにもっと長い時間とどまらせようとする戦略だ。ソーシャルメディア各社が脳認知科学者らを採用し、絶えず機能をアップデートしているのも、これが理由。脳を中毒にさせる研究をしているのだ。

 アメリカ合衆国公衆衛生士官部隊(PHSCC)を率いるビベック・マーシー医務総監(PHSCC中将)は本紙のインタビューで「ソーシャルメディア各社はユーザーの中毒を強化しようと、脳科学まで動員している」と語った。フェイスブックの元役員も7年前、スタンフォード大学における講演で、ドーパミンが出続けるように設計したソーシャルメディアが社会を破壊していると打ち明け「大変な罪の意識を感じる」と語った。ユーザーを中毒にさせようと血眼になっているソーシャルメディアが「麻薬の売人と変わらない」と言われる理由だ。

郭守根(クァク・スグン)論説委員・テック部次長

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  • ▲イラスト=李撤元(イ・チョルウォン)

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