このため1960年に国家保安法を整備したという。反国家団体(北朝鮮)についての定義、反国家団体に国家機密・軍事機密などを漏らす場合に処罰する「目的遂行」条項などが作られた。この「目的遂行」条項は、刑法上の間諜罪とほぼ同じ内容だ。代表的な間諜事件である2006年の一心会、2011年の旺載山事件などの被告人らは、国家保安法上の目的遂行罪で有罪を言い渡された。
こうした間諜罪の処罰システムについて、ある法曹関係者は「間諜罪の立証は極めて難しい」とし、その理由を「現実に存在しない『敵国』や『北朝鮮』との関連があった場合にのみ処罰が可能というシステムだから」と語った。与野党もこうした問題を認識し、2004年から刑法上の間諜条項の「敵国」を「外国」に拡大する内容の改正案を発議したが、国会では毎度通過できずにいる。
先の第21代国会で、法制司法委員会の検討報告書は「友邦間でも熾烈(しれつ)な情報収集を行っているだけに、多元化された現代の国際環境において国家の外的安全は、必ずしも敵国によってのみ侵害されるわけではない」とし、法改正が必要だとした。だが「間諜行為の範囲や国家機密流出行為をどこまでと見るかなどを明確にする必要がある」という意見が提示され、法務部(省に相当)と法院行政処の間にも意見の食い違いがあり、法改正に至らなかった。
このところ韓国の与野党は、第21代国会で間諜関連の法改正案を処理できなかったことを巡って、互いに相手のせいにしている。それでも「現行の間諜条項には問題がある」という認識は共有している。今の第22代国会でも、与野党議員が関連法案を発議している。中央大学法学専門大学院の金聖天(キム・ソンチョン)教授は「与野党が国益を考えるのであれば、深みある議論を行って国家機密の範囲を定め、『敵国』を『外国』に変えなければならない」と語った。
キム・ジョンファン記者、キム・サンユン記者