安洗塋は膝の負傷を抱えながら国際大会で何度も優勝した。しかしそれに伴って痛みもひどくなり、最初から試合できず棄権することもあった。そのためオリンピックに向けて安洗塋が通常のコンディションを維持できるか懸念も広がっていた。すると安洗塋は自らのSNS(交流サイト)を通じ「今の負傷は短期間では回復しない。オリンピックを見据えて痛みに適応していきたい」との考えを示していた。実際に今回のオリンピックまでに膝の状態は100%回復せず、80%のレベルで試合に臨んだという。
安洗塋は2017年12月、満15歳の時にシニアの韓国代表選抜試合に勝ち「天才少女」として注目を集めた。ところが翌2018年のジャカルタ・パレンバン・アジア大会では1回戦で敗れた。メダルが期待された2021東京五輪も準々決勝で足下をすくわれた。しかしその後安洗塋は世界トップ選手の一人に生まれ変わった。女子シングルス四天王の一人とも言われたが、日本の山口茜や中国の陳雨菲など強敵を破ることはできなかった。安洗塋は守備型とされていたが、レスリングの練習を取り入れるなど厳しいトレーニングで体力を向上させ、攻撃力も備えたオールラウンドの選手に生まれ変わった。
安洗塋にとっては昨年が大きな転換の年になった。これまで勝てなかったライバルに次々と勝利し、世界選手権など主要な国際大会でも勝ちを重ね世界ランキング1位に躍り出た。杭州アジア大会では団体と個人の決勝でいずれも陳雨菲を破って2冠王になり、世界最強の地位を固めた。安洗塋は負傷を克服して今回の五輪でも金メダルを獲得し、約束通りパリ大会をロマンチックに終えた。
安洗塋は今や方銖賢を超える韓国女子バドミントンのレジェンドになった。五輪と世界選手権の2冠は方銖賢も達成できなかったからだ。方銖賢の世界選手権での最高成績は1993年の銀メダルだった。
パリ=キム・ヨンジュン記者