弾劾に次ぐ弾劾 韓国巨大野党が尹政権揺さぶり=与党「お手上げ状態」

【ソウル聯合ニュース】韓国国会(定数300)で過半数となる170議席を握る革新系最大野党「共に民主党」の独走が勢いを増し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権を揺さぶっている。

 憲政史上初となる放送通信委員長職務代行の弾劾を推進するなど、放送通信委員会に対する弾劾訴追案を3回提出したほか、放送通信委員長(閣僚級)候補の人事聴聞会を3日間にわたり強行するという前例のない事態も発生した。

 野党はMBCテレビなど公営放送の経営陣交代に直結する放送通信委員会の意思決定構造を問題視して立法や弾劾を進めているが、保守系与党「国民の力」としては演説を長時間続けて議事進行を妨げる「フィリバスター」以外、これといった対抗策がない状況だ。

 放送通信委員長職務代行を務めていた李相仁(イ・サンイン)副委員長は26日、国会本会議で自身の弾劾訴追案が採決されるのを前に辞意を表明し、尹錫悦大統領はこれを直ちに承認した。

 共に民主党が提出した弾劾案が可決されれば委員長の職務が停止され、放送通信委員会の機能が停止するため、自ら身を引くことを選んだのだ。

 これにより、李氏の1人体制で運営されていた放送通信委員会は常任委員の五つのポストが全て空席になるというかつてない局面を迎えた。

 共に民主党が放送通信委トップの弾劾訴追案を提出するのは、李東官(イ・ドングァン)元委員長、金洪一(キム・ホンイル)前委員長に続き3回目。なかでも今回のような職務代行に対する弾劾訴追は憲政史上初めてで、弾劾訴追権の乱用という批判は免れない。

 同党は、李相仁副委員長が職務代行として公営放送の役員選任手続きを単独で進めたことを弾劾の主な理由に挙げたが、国民の力は憲法と関連法上、副委員長は弾劾対象に当たらないとして「不法弾劾」と批判した。

 一方、国会科学技術情報放送通信委員会では放送通信委員長候補の李真淑(イ・ジンスク)元大田MBC社長に対する人事聴聞会が3日間にわたり行われた。首相や憲法裁判所長、大法院(最高裁)判事などを除き、通常は1日で終わる閣僚級候補者の聴聞会が3日間行われるのは前代未聞で、国民の力は「与野党の合意を破った」と強く反発している。

 26日午後の本会議では、放送通信委員会の議事定足数を4人以上とする内容が盛り込まれた放送通信委員会法改正案の採決が行われる見通しだ。

 同法に韓国教育放送公社法、放送法、放送文化振興会法を加えた「放送4法」の改正案に反対する国民の力はフィリバスターを行っているが、過半数の議席を持つ共に民主党は終了後に採決を強行する構えだ。

 このような異常な国会運営の原因は、MBCを巡る問題にある。

 共に民主党が放送通信委員長職務代行の弾劾訴追案を提出したのは、委員会の機能を停止させてMBC経営陣の交代を阻止する狙いがあるとみられ、放送4法改正案の採決強行も本質的な目的は同じだといえる。李真淑氏が委員長に任命されれば現在の議事定足数である2人を満たし、公営放送の役員選任などの意思決定が可能になるためだ。

 与党内では、李真淑氏が委員長に任命されれば共に民主党が放送通信委員長の弾劾を推進するとの見方も出ている。

 その場合、野党による弾劾と委員長の辞任がまたも繰り返される可能性がある。

 政界では、野党による弾劾が常態化していることに懸念の声が上がっている。

 共に民主党は2022年の尹錫悦政権発足後、李祥敏(イ・サンミン)行政安全部長官をはじめ計13件の弾劾を試みた。このうち6件は第22代国会のスタート(今年5月30日)から2カ月以内に行われた。李在明(イ・ジェミョン)共に民主党前代表の不正疑惑捜査を担当した検事を含む検事4人の弾劾案もこれに含まれる。

 尹大統領の国政運営を批判し、弾劾案の正当性を強調する共に民主党は、大統領の弾劾訴追を求める請願の賛同者が100万人を超えたことを受けてこの日の国会法制司法委員会で2回目の聴聞会開催を主導した。

 尹大統領の任期は半分以上残っているが、同党を含む野党陣営では早くから大統領の弾劾が公然と唱えられていた。任期序盤から弾劾が取り沙汰されている点では、政権2年目に弾劾訴追案が国会で可決された盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代をほうふつとさせる。

 少数与党である国民の力は、放送4法改正案について少なくとも5日間フィリバスターを続け、国民に向けて法改正の不当性をアピールする方針だ。だが、党内の一部では繰り返されるフィリバスターの実効性を疑問視する声も上がっている。

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