米法務省に申告せず韓国政府のために活動したとして、米外交協会(CFR)のスミ・テリー上級研究員が16日に米検察当局に起訴された。この問題を受け韓国の情報機関である国家情報院と韓国外交部(省に相当)が対応に乗り出した。11月の米大統領選を前に米国国内では各国が活発に情報収集に乗り出しているが、このような時期に今回の事件が表面化したため、韓国の情報収集や外交面での活動に支障が出ることへの懸念も高まっている。
【Photo】マンハッタンの高級レストランで韓国情報機関の幹部2人と食事をしているスー・ミ・テリー研究員
国家情報院はまず問題の事件に関与した人物への内部監察を開始したことが21日までに分かった。ある内部情報筋は「この事件に関係した3人の職員のうち1人はすでに退職したが、2人は今も現職だ」「この2人については(監察などの)処分が進行中と聞いている」と伝えた。2人のうちの1人で2級幹部のA氏は先日役職から解任され、もう1人のB氏も海外勤務中だったが先日本部に呼ばれ、監察処分が下される見通しだという。2人はいずれも文在寅(ムン・ジェイン)前政権当時、米国で勤務した前任と後任だ。
米検察当局の起訴状によると、テリー氏は2013年から10年間、ニューヨークとワシントンの韓国公館に外交官として派遣されていた国家情報院の職員3人に非公開の情報を提供し、さらに韓国政府関係者と米政府関係者が直接会う場を準備するなど、韓国側に数々の便宜を提供していた。国家情報院職員らはその見返りとしてテリー氏に外交官公用車を利用させ、ブランドバッグや服を買い与えていた。またその際に外交官身分証明書を使い免税特権まで利用していた事実も起訴状で明らかになり、「資質問題」も同時に浮上している。問題の国家情報院職員らは米政府当局から常に監視を受けていた。
情報活動に詳しい複数の専門家はこの問題が表面化した背景について「情報の意図的なリークがあったのでは」と指摘する。上記の情報筋は「国家情報院の活動が相手国に把握されていた場合、内部の何者かがその情報をリークした可能性を探るのが情報機関のプロトコルだ」「いわゆるモグラ(情報機関内の敵のスパイ)を暴く作戦が行われる可能性もある」と説明した。別の内部筋は「米検察当局がテリー氏を逮捕するなど、この事件を公にした理由については国家情報院内部でもさまざまな見方がある」「以前からの人事面での対立もあり、責任の所在については議論が続いている」と伝えた。
韓国外交部も今回の事態には非常に当惑しているようだ。外交部は今年上半期、それまで北朝鮮核問題の関連業務を担当してきた韓半島平和交渉本部に情報分析部署を新たに立ち上げ「外交戦略情報本部」とする組織改編を行い、さらに情報機能を強化するため先月には米国務省情報調査局(INR)と覚書を交わし、交流と協力の拡大を取り決めていた。外交部のある関係者は「第1次トランプ政権で初代の大統領補佐官だったマイケル・フリン氏が2016年の大統領選挙期間中にロシア大使と接触した問題で解雇・起訴された。これを目の当たりにしたトランプ陣営の幹部らは今も外国の関係者との接触には極度に神経質だ」「大統領選挙陣営とは関係ない識者らも同様で、当分は韓国政府関係者との接触を避けることが予想されるため、その対策を今も検討している」と述べた。
外交部は米国のシンクタンクや米国の大学を対象とする公共外交全般において、外国代理人登録法(FARA)への抵触がないか法律面での検討を始めている。上記の外交部関係者は「起訴状に記載された事実関係の中で、シンクタンクに寄付金を提供し、その見返りに学術会議での講演や寄稿を依頼することは『ギブ・アンド・テイク』で動くワシントンではどこの国の政府もやっていることだ」「国家情報院が公用車を使ったりブランドバッグさえ買い与えたりしていなければ、これほどの問題にはならなかったはずだ。一体何をやっていたのか到底理解できない」と不満を述べた。
金真明(キム・ジンミョン)記者、梁昇植(ヤン・スンシク)記者