米合衆国議会議事堂乱入や下院議長追放などのすべてを背後から誘導した人物こそバノン氏だ。攻撃的な支持者たち、強硬派議員たちに「直ちに行動せよ」と催促して彼らを動かした。そのバノン氏が最近はバイデン政権の人々に対する「報復捜査」を最優先課題に掲げている。大統領選挙の結果がどうなっても「混沌(こんとん)」をあおるバノン氏の発言はさらに激しくなるだろう。その結果が何に返ってくるのか、考えるのも恐ろしい。
バノン氏のことを考えていると、左派系ジャーナリストの金於俊(キム・オジュン)氏の姿が何度も重なって見えた。最近、韓国政界で繰り広げられている最大野党・共に民主党の「弾劾ショー」も金於俊氏の放送で議論され、決定された。「検事弾劾案」発議の数カ月前から金於俊氏は何度も「この人(検事)たちを弾劾しなければならない」と言っていた。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領弾劾聴聞会の推進計画を共に民主党が公にしたのも、金於俊氏の放送でのことだった。理念的には両方の極にあるが、憎悪と対立を栄養分とする「極端政治」に頼って生き延びているという点で、2人は同じ境遇にある。
バノン氏は今月初め、米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューで「私は『ジャーナリスト』ではない」と言った。理念を前面に掲げ、熱烈な支持層を動かす「扇動家」であることを隠していないのだ。金於俊氏もやっていることは変わりがない。ところが、金於俊氏は自身を「ジャーナリスト」と名乗っている。事実を追い求め、真実を問いただすジャーナリストを自称し、根拠のないうわさ、巧妙に操作された虚偽事実を垂れ流す。危険なのはどちらなのだろうか。
ワシントン=イ・ミンソク特派員