■金正恩・プーチンの冒険主義結合が最も危険
朝中の悪化と朝ロの密着がもたらすであろう最大のリスクは、金正恩とプーチンの冒険主義が結合することだ。金日成(キム・イルソン)の冒険主義は6・25を招き、プーチンの冒険主義はウクライナを戦場にした。反対勢力なき独裁者であればあるほど、判断を誤る可能性が高まる。北朝鮮の経済は農耕社会レベルだ。それなのに核とミサイルがある。金正恩はプーチンの食糧と武器技術さえあれば、冒険のチャンスをうかがうことができる。プーチンも、金正恩の砲弾支援さえあれば戦争を引っ張っていくことができる。
専門家らは、ウクライナ戦争と米国大統領選挙が主な変数になるだろうと考えた。戦争が終われば、プーチンの立場からすると、北朝鮮の砲弾より韓国との経済関係の方が重要になると考えられる。米国大統領選挙でトランプが当選すれば、戦争の状況や米朝関係、米中関係などが大きく変わる可能性がある。一部では、金正恩が1950-60年代の金日成のように、中ロ等距離外交を通して軍事的・経済的実利を上げていると語る。しかし、当時はソ連が「主要2カ国」であって、中ソ関係は核戦争を準備するほどに悪かった。今の北朝鮮は、中国が送油のパイプラインを閉めるだけで、10日持ちこたえるのも難しい。金正恩の反中感情のもつれは、長期的には悪手になりかねない。
金正恩がプーチンと合意した「朝ロ自動車橋」連結も、変数になる見込みだ。朝ロが橋を架けようとしている豆満江の河口部は、中国が東海に出ていこうとしているルートだ。中国の消息筋は「朝ロの新しい橋が完成したら、中国の船は、海に向かうのが困難になる」とし「中国は黙っていないだろう」と語った。
■「ウクライナ終戦、米大統領選が変数」
朝中がきしみを上げ、朝ロが密着する東アジア情勢に対し、米国など西側も少なからぬ関心を示している。
米国務省のカート・キャンベル副長官は最近、ワシントンでの対談で「ロシア・北朝鮮間で起きていることに対し中国が多少不安になっているというのは間違いなさそうだ」とし「中国側がわれわれに、こうした点を示唆した」と語った。キャンベル副長官は、米国のアジア政策を総括している。またキャンベル副長官は「中国は(朝ロ軍事協力で)北朝鮮が北東アジアの危機を招きかねない挑発的な措置を取るだろうとみて、懸念している」とも述べた。英国BBC放送も「朝ロ関係の急速な発展に対し、中国が不愉快さを示す兆候がある」と伝えた。その上で、5月に中国を訪問したプーチンがすぐに平壌に向かわず、ロシアに戻ってから再度6月に訪朝したのは、中国がプーチンの北京・平壌同時訪問を望まなかったからだろう-と分析した。ロイターによると、国際的に孤立している北朝鮮・ロシアと、韓米日が主な貿易相手国である中国は立場が違い、中国は成長の鈍化から抜け出すためにも朝・ロとひとまとめにされることを望まない、と報じた。
ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、朝ロの軍事同盟レベルの新条約は中国の悩みの種に浮上した、と伝えた。中国人民大学の時殷弘教授は、NYTの取材に対し「中国の視点からすると、朝ロ条約は韓米日協力と結合して地域内の対立と競争、摩擦の危険をかなり悪化させた」とし「地域内の軍事化が加速したら、中国の利益は危うくなる」と述べた。反面、韓国政府の高官は「北・中は利害関係が深くからんでおり、ロシアが北朝鮮の頼みの綱にはなり難いということは金正恩も分かっている」としつつ「米国大統領選挙など中長期的状況によって、北・中の関係はいつでも回復し得る」と語った。
安勇炫(アン・ヨンヒョン)論説委員