故障していないのに「故障」…機体を使い回す韓国LCCティーウェイ航空の事情【コラム】

 最近韓国航空業界の話題は故障論争だ。「故障」に「論争」という言葉が付いている理由は、故障に伴う搭乗キャンセルなどが行われた航空機が実は故障していなかったケースがあったからだ。

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 この問題を巡る複雑な事情が表面化したのは先月13日だ。この日大阪行きティーウェイ航空便の離陸が11時間も遅れた。乗客は狭い機内に待機させられたため抗議が相次ぎ、疲れ果てた310人の乗客のうち204人は出国を諦めた。

 しかもこの航空機が実は故障していなかったことが後から伝えられ、乗客の怒りに油を注いだ。実際に欠陥が見つかった航空機は大阪行きではなく同じ機種のザグレブ(クロアチア)行きだったが、ティーウェイ航空は2機をこっそりと入れ替えたのだ。事情を知らされなかった乗客たちはその時点では「搭乗ゲートが変更になりました」とのアナウンスに素直に従っていた。

 業界ではこの問題について「航空機の使い回しという古くからの慣習が表面化した」とも言われている。乗客が少ない、あるいは行き先が近い航空機をあえて欠航させ、問題がある長距離路線、乗客が多い路線にその航空機を回すのだ。過去に一部の航空会社でこのような行為が発覚し、課徴金を支払ったケースもある。今回も航空機が遅延などした場合、1人当たり最大で600ユーロ(約10万4000円)の補償金が徴収されるEU(欧州連合)の厳しい規定が理由だった可能性が高い。航空会社はたとえ大阪行きを欠航させてもザグレブ行きを欠航させない方が利益が残ると考えたのだ。

 要するに大阪行きの乗客は犠牲を強いられたと言わざるを得ない。自分たちの計画やスケジュールは全く考慮されなかった上に、航空会社は乗客に航空機から降りるよう要求する際、出発時間が遅れたとしか説明しなかったからだ。乗客らはティーウェイ航空を相手取り損害賠償請求訴訟を準備している。

 所管する国土交通部(省に相当)の対応はどうか。航空法は「予測不可能な整備の必要性などがあった場合、出発の10分前までは航空機を変更できる」と定めている。しかし「使い回し」については故障していない航空機の欠航につながるため違法の温床になるとされている。

 国土交通部はティーウェイ航空を含む航空会社全体を調査する方針を明らかにした。ただし航空機の変更は許可制ではなく申告制のため、その対応は決して単純にはいかないようだ。その一方で国土交通部は4日、「安全確保に向けた航空各社の投資額は5兆8453億ウォン(約6790億円)に上り、これは2022年に比べて38%多かった」と報道資料を通じて伝えた。この報道資料には「航空各社は事前整備の仕組みの強化に向け努力している」という国土交通部の前向きな評価も記載されている。

 この資料におそらく間違った記述はないだろう。しかしこれに共感する関係者も多くはないはずだ。使い回しが行われていることは航空機の欠陥がそれだけ多いことを意味し、また昨年は11の航空会社に所属する整備士の人数が5628人で、これは2019年に9社を対象に調べた時の5944人よりも少なくなっている。

 年間売り上げが1兆ウォン(約1200億円)を上回るティーウェイ航空はこれまで急激に規模を拡大し、今年はローマ、パリ、バルセロナなど長距離路線の運航も開始する。長距離路線は運航の難易度が非常に高く、小さなミスが不幸な事故につながる恐れもある。過酷とも言えるこのような動きが続く理由は、それがまさに生き残る道だからだ。そのことは航空各社はもちろん、乗客も誰もが知っている。

キム・アサ記者

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  • ▲ティーウェイ航空のA330-300(記事の内容とは関係ありません)/news1

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