ほくろの除去100ウォン(約12円)、しわ取りボトックス注射990ウォン、小顔治療用の輪郭注射3ccが1000ウォン!?―― 韓国・ソウルでは今、破格の安さによる美容施術が横行している。大半は1回のみの体験キャンペーン。つまりは客寄せ用の「餌」だが、実際に病院に行き相談を受けると、費用が雪だるま式に増え、予想していたよりも多額の費用を支払うことになる可能性が高い。ベッドに横になり、医師が注射器やレーザーを手にして、「このほくろも除去しましょう」 「これは面積が大きいから1万ウォンです」と言っても断れないからだ。
【Photo】「唾を飲んだら窒息しかけた」 ボトックス注射で首の筋肉がまひした米36歳女性
最近30代の女性Aさんは眉間に深いしわができ、「人生初のボトックス注射」を打つと決心した。ボトックス注射は一定期間筋肉をまひさせ、皮膚に張りを出す効果がある。ところがインターネット検索をしてみると、価格がさまざまなことに驚いた。ソウル市瑞草区の自宅近くの皮膚科は専門医が担当し、1部位当たり5万ウォンだ。これに対し、不便ではあるが、郊外の江西区まで行けばたった990ウォンだった。ボトックス注射には国産、輸入など数十種類あり、効能などに対する完璧な比較は不可能だが、額と眉間の2部位に打つ場合の価格はそれぞれ10万ウォン、1980ウォンとなる。友人にどちらに行くべきか尋ねた。すると、「ボトックスは大した技術は必要ないので機械のように注射を打つ工場型の方が上手だ」「安いのには理由がある。顔にする注射なのだから、やはり自宅近くに行くべきだ」などと意見が交錯した。
Aさんは990ウォンに心が動いた。1時間以上かけて病院に到着すると、相談室長が「秘密の部屋」に案内した。話を要約すると、「990ウォンの注射では耐性が生じるので、国産の3万ウォンの注射を打て」ということだった。外国産は10万ウォン。何かに取りつかれたようにクレジットカードを差し出した瞬間、「お金を節約するためにここまで来たのに」という考えが頭をよぎり、その勢いでドアを蹴って出てきたという。
今度は明洞のクリニックに行った。最初の部位は1000ウォン、2つ目の部位からは1万5000ウォン、額と眉間で1万6000ウォンプラス付加価値税だった。Aさんは「一度だまされたから、安いところを探して、病院を渡り歩くのも悪くなさそうだ。ボトックスやほくろ除去、脱毛などは高い技術を必要としないので、サービス価格ではないかと思う」と話した。Aさんのレビューを見たネットユーザーは「狎鴎亭の有名整形外科で30万ウォンを払って注射を打ったが、自分はカモなのか」というコメントを残した。
皮膚科、整形外科の看板を掲げたクリニック、医院間の競争が激しくなり「最低価格マーケティング」が過熱している。消費者にとっては選択の幅が広くなったが、安全性などがきちんと保障されているのかなど懸念も高まる。業界関係者は「レーザー施術などの場合には安かろう悪かろうかもしれない。新しくて性能が良い機械が次々と登場する状況で、既に元を取った古い機械で施術を受ければ、希望するほどの効果を期待することは難しい」と話した。
こうした中、ソウル市、京畿道など首都圏では土曜日はもちろん、日曜日まで診療するケースが増えている。インターネットで「整形外科、日曜日」「皮膚科、日曜日」などと検索すると、ソウル市の江南、明洞、弘大、永登浦、竜山などの地区に位置する病院が数多くヒットする。平日は午後9時、10時まで診療を受け付けている。家庭医学科、小児科、耳鼻咽喉科などは、午後6時になると閉まるところが多いが、儲けが大きい皮膚科、整形外科に医師が集中したことで、出血競争が起きているとの分析も聞かれる。
特に一般顧客ではなく、医療施術を受けに韓国を訪れる外国人を狙う場合、日曜日の営業は必須だ。実際昨年、医療サービスのためにソウルを訪れた日本人観光客は18万2166人で、前年の9倍以上に増えた。診療科目は皮膚科、整形外科が圧倒的だった。ある皮膚科の相談室長は「日本では皮膚のたるみを治療する『ウルセラ』などリフトアップ施術の価格が1000万ウォンを超える。韓国では同じ治療を超音波照射1ショット当たり100万ウォン程度で受けられるので、週末に施術のために韓国を訪れる日本人が多い」と話した。そのため、「最近整形外科のコーディネーターとして就職するには、日本語が最も重要なスペックになっている」という。
一部の病院では観光客の便宜を図るために税金還付受付機を設置したり、近隣の観光地の地図を提供したりしている。先生、週末まで患者さんのためにご苦労さまです。
キム・アジン記者