【ソウル聯合ニュース】韓国政府は8日、大学医学部の定員を増員する政府方針に反発して職場を離脱した研修医に対する医師免許停止などの行政処分を同日付で撤回すると発表した。
今年2月に職場離脱を始めた研修医を医療現場に復帰させるための窮余の策だが、離脱を違法行為と判断しながら処分を撤回したのは「免罪符」を与える行為とみなされ、非難は避けられない見通しだ。
行政処分の撤回は当初、「処分の停止」になる予定だったが、今後の処分の可能性をなくした「撤回」となり、職場に復帰したかどうかに関係なく、すべての研修医に対して適用されるさらに踏み込んだものとなった。
医師免許の停止という強硬策にも、復帰すれば処分しないという懐柔策にも応じなかった研修医を復帰させるための苦肉の策ではあるものの、職場離脱しなかった研修医の立場からは公平性を欠いた決定との指摘が出るとみられる。
この決定に関連し、曺圭鴻(チョ・ギュホン)保健福祉部長官は記者会見で、「すべての研修医に対して今後も行政処分をしない計画」としながら、「ただ行政命令は法により正当になされた措置であるため、取り消しは考慮していない」と説明した。
職場を離脱した一部の研修医は、離脱しなかった研修医や早期に復帰した研修医を嘲弄(ちょうろう)し、名簿を作って医師のオンラインコミュニティーで公開するなどして圧力を加えた。離脱した研修医に対する今回の決定は、政府が強調してきた「厳正対応」の原則を覆すものでもある。
これまで医療界側は医学部定員の増員など政府の医療改革に対し、抗議行動で政府を「降伏」させ、抗議活動を行っても処罰されないという自信をのぞかせてきたが、政府はこれを「不幸な歴史」「悪習」と指摘して厳正な対応を強調していた。
政府も今回の決定に対する批判が出ることは予想したものの、医療現場の混乱に終止符を打つべきだという声が政府内で大きくなり、復帰していない研修医の処罰も撤回する方向で意見をまとめたことが分かった。
曺氏は職場離脱した研修医としなかった研修医の扱いが不公平という批判が出る可能性があるとしながら、「先月の行政命令撤回にもかかわらず復帰または辞職する研修医が多くないため、医療の空白を最小化するために決断を下した」と説明。批判を受けるのは覚悟のうえと伝えた。
今回の決定が、2026学年度以降の医学部定員の増員や医療改革を巡る政府と医療界のあつれきにマイナスに作用する可能性も指摘されている。
医学部教授団体は、2025学年度の入試の医学部定員増員が確定した状況でも休診などで抗議行動を続けているが、ここには今後の医療改革を巡る議論で主導権を握るという意図が見える。医療改革の議題には、非対面の診療規制の強化、医療事故の処理を巡る特例法や看護法の制定など、立場によって見解の差が大きい政策が少なくない。
保健福祉部の関係者は「政府が患者のことを考え、悪口を言われる覚悟をして決心した」とし「職場離脱した研修医に対して処罰をしないことにして立場を変えたが、医学部定員の増員という改革を成功させたという点で(それに失敗した)過去の事例とは違う点がある」と強調した。