【ソウル聯合ニュース】韓国で昨夏、水害による行方不明者を捜索中だった海兵隊員が殉職した事故を巡り、業務上過失致死と職権乱用の疑いで告発されたイム・ソングン前海兵隊第1師団長に対し、慶尚北道警察庁は8日、「嫌疑なし」と判断し送検しない方針を決めた。
警察は隊員が死亡した直接的な原因として大隊長が任意で捜索指針を変更したことを挙げた。事故当日の捜索指針は「水中ではなく水辺で、ブーツの高さまで入れる」だった。だが、大隊長は事故前日の会議で、「腰の下まで(水中に)入る。承認を受けた」と指示したという。イム氏は捜索指針の変更を認識しなかったため、死亡事故との因果関係を認められないと判断した。
メディアなどはイム氏が捜索を指示し、安全措置を怠ったなどとして計9件の問題点を指摘した。だが警察はいずれもイム氏に適用できないと結論付けた。同氏が「水辺に下りて碁盤の形のように(細かく)捜索せよ」と指示したのは水中捜索を命じたのではなく、念入りに捜索するよう強調したものだったと説明した。隊員らに救命胴衣を着用させなかったことに関しては、「現地で地方自治体、消防当局などと協議し不明者の捜索区域や役割などが決まったことを考慮すれば、事前に水中捜索に備えた安全対策を整えなくても注意義務違反とは見なしがたい」と判断した。
一方、警察は海兵隊第1師団の第7旅団長ら現場の指揮官6人は業務上過失致死の容疑で送検することにした。イム氏の容疑はすべて認められないとしたが、旅団長に対しては会議の結果をより詳細かつ正確に説明・指示しなければならず、気象状況などを考慮し作戦配置を決めるなど管理監督の責任があったが、怠ったと判断した。
死亡した隊員が所属していた砲兵部隊は追加投入された兵力で、部隊の特性上、捜索作戦の経験が少なかった。慶北警察庁の捜査部長は「特に捜索指針に対する不明確な説明とコミュニケーション不足、消極的な指示が重なり合い、『事実上の水中捜索』と誤認させる大隊長の捜索指針の変更に影響を与えた」との見解を示した。
警察は隊員が昨年7月、危険な川の本流に入り死亡した経緯などを調べるため、24人体制で担当チームを設置し、捜査を進めてきた。
同事故を巡っては、軍の不適切な対応などを隠すため捜査に圧力がかけられたとして野党が政府から独立した特別検察官に捜査させるよう要求。与党は強く反発したが、国会で過半数の議席を握る「共に民主党」の主導で今年5月に特別法案が可決した。だが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が拒否権を発動した。共に民主党は4月の総選挙で当選した国会議員で構成された新たな国会に再び法案を提出し、今月4日に強行採決で可決した。