■水深の浅い台湾海峡を航行した理由
未明の時間に突然海面へ浮上した理由を巡っては、誤作動や故障が発生したのだろうという見方が多くあります。ただ、駆け付けたのが護衛艦1隻だけであるところを見ると、深刻な問題ではなかったとみられます。状況が良くなかったのであれば、多数の軍艦と軍用機が出動したでしょう。
094型は満載排水量が1万トンを超える大型潜水艦です。発見された海域は水深が45メートルほどで、大型潜水艦が航行するには安全ではない場所だといいます。
台湾の専門家らは、米国と日本が台湾東部のフィリピン海で合同訓練中だった状況と関連があるとみています。潜水艦は、航行時に出る騒音の特徴、すなわち「音紋」が露出することを極度に嫌います。音紋を把握されてしまうと、どこへ行こうが容易に位置がばれかねないといいます。このため、台湾東部の海域で訓練中だった米国と日本の哨戒機に捕捉されることを懸念し、水深の浅い台湾海峡側へやって来た可能性があるのです。水深の浅い台湾海峡を航行していて海底に座礁することを恐れ、海面に浮上した-というのが専門家らの分析です。
台湾海軍の艦長出身の呂礼詩氏通過して北上したら、一帯で訓練中の米国と日本の対潜水艦探知装備に捕捉されかねないので、航路を変えたものとみられる」と語りました。
■米ロより騒音が大きく、捕捉が容易
過去数年間、中国は潜水艦の問題で幾度か恥をかいてきました。18年1月、093型攻撃原潜1隻が、日本と領有権を争っている尖閣諸島の水域に入り、海上自衛隊に見つかったことがありました。海上自衛隊の護衛艦に追い回され、結局は公海上に浮上しましたが、日本側は当時「2日前から位置を把握していた」と言っていました。21年にも093型原潜2隻が、南シナ海を離れて太平洋に向かう英国の空母を尾行し、空母を護衛していた艦艇の音波探知機に捕捉されたことがありました。
昨年10月には、英国デーリー・メール紙が「西海で中国の原子力潜水艦が沈没し、55人が死亡した」と報じました。これについて台湾政府は今年5月、「沈没するほどの大きな事故ではないと判断している。ただ、事故はあった」とコメントしました。台湾軍が中国の潜水艦の動態を漏れなく把握していることを意味しています。
このように容易に捕捉されるのは、中国原潜の水中騒音が大きいからです。習近平国家主席自身も乗艦したことがある094型原潜も、水中騒音は120デシベルで、米国やロシアの戦略原潜とは大きな格差があるといいます。
崔有植(チェ・ユシク)記者