「父は朝鮮人民軍ではなく韓国軍に殺害されたと修正して」 韓国政府の人権調査機関にまさかのお願い【コラム】

 韓国政府傘下の人権調査機関「真実・和解のための過去事整理委員会」に今月初め1本の電話がかかってきた。6・25戦争当時、父親が朝鮮人民軍に虐殺された事実がすでに確定したある遺族が、人民軍ではなく韓国軍に殺害されたと修正してほしいというのだ。6・25から74周年を迎えた護国報勲の月にこんな電話がかかってくるとはにわかに信じがたかった。

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 委員会は「過去との和解、国民統合への寄与」を目的に2005年に設立された。6・25当時、朝鮮人民軍やパルチザンなどに虐殺された被害者の名誉回復もその目的の一つだ。当時昼は太極旗(韓国の国旗)、夜は人共旗(北朝鮮の国旗)を掲げないと生き延びられない歴史の暗黒期だったため、韓国軍警察による被害も真実解明と賠償の対象になるだろう。賠償はこれまで5700件以上行われた。犠牲者の遺族に平均1億3000万ウォン(約1500万円)支払われ、これには総額8000億ウォン(約920億円)以上の予算が投入された。

 ところが当時、朝鮮人民軍やパルチザンなど敵対勢力により犠牲になった場合は国の賠償は1件も行われていない。国の公権力による犠牲とは違い、加害者が北朝鮮の場合は韓国政府に賠償の責任がないからだ。これは6・25戦争の責任とも直結する問題だ。昨年12月に水原地裁は敵対勢力による犠牲者の遺族が政府を相手取って訴えた損害賠償請求訴訟で「人民軍と地方左翼勢力による同時多発的虐殺が行われた事実は認められる」としながらも「大韓民国の主権が及ばない人民軍占領地で起こった行為に対してまで国の保護義務があるとは考えがたい」との判断を示した。

 憲法第30条には「他人の犯罪行為により生命・身体に被害を受けた国民は国家から救済を受けることができる」と定められている。これにより先日済州4・3事件の犠牲者について、加害者が南朝鮮労働党や韓国軍警察のどちらであっても、被害者遺族に対して最大で9000万ウォン(約1000万円)の補償・賠償が行われた。韓国政府の主権が及ばなかった日帝当時の犠牲者は独立有功者としてたたえている。韓国政府がまず補償し、後に北朝鮮に求償権を請求する方法もある。

 「人民軍など敵対勢力による犠牲を理由に国を相手取った訴訟で国の賠償義務を認めない判決が相次ぎ、戦争犠牲者の被害救済に不公平が生じている」との理由から、野党・共に民主党の徐瑛教(ソ・ヨンギョ)議員や与党・国民の力のキム・ヨンパン議員らを中心に、補償審議委員会などを新たに設置し補償金を支払う真実和解委員会基本法改正案が第21代国会に提出された。また水原地裁も「敵対勢力による犠牲者への国の補償義務」には言及したが、関連法が不十分な現状を理由に賠償請求を棄却した。

 先日取材したある宗教犠牲者の遺族は「むしろ韓国軍警察により犠牲になったのであれば追悼もされ慰労金も受け取ることができた」と嘆いた。このような歴史の痛みについては大韓民国がまず対応し、統一後に北朝鮮の戦争責任を徹底して追及した上で、求償権を請求することにより賠償を強制する条項が明記された法律を、国会で一日も早く成立させてほしいものだ。

ソ・ボボム記者

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