韓国の産油国への夢、リスクを取る者は誰なのか【寄稿】

 だが、こうした検証のためのデータは、人によって重みが違う。すなわち、ある種の決定的データというものがあり、その決定的な検証データは概して、リスクを取る側から出る。どのような決定がなされようと自分には何の損害も生じない人々に、徹底した検証を期待するのは非合理的だ。アブレウ博士の立場から考えてみよう。埋蔵可能性についての博士の前向きな解釈は、博士にいかなるリスクも生じさせない。博士は、石油公社が提示した過去15年間の資料を慎重に分析するよりも前に、東海の深海が石油を埋蔵し得る良い環境だということが「一目で分かった」と語った。「祝うべきことなのに、なぜ論争になるのか理解できない」とも述べた。こうした発言をしたことで博士が負うべきリスクがあるだろうか?

 問題は韓国政府だ。韓国人は、Act-Geo社の前向きな解釈を合理的に疑ってみなければならない。なぜかというと、石油公社と共に迎日湾一帯を過去15年間共同探査したオーストラリアのエネルギー企業Woodsideが、2022年に「見込みなし」と結論付け、租鉱権の50%の持ち分すら返納し、撤収したからだ。まさにリスクを取る立場にあるWoodsideは撤収し、韓国国民が聞きたい話をしているAct-Geoは無血入城した。率直に言って、リスクを取らない者たちの意思決定をどれほど信頼できるだろうか?

 コンサルティングは不必要と言っているのではない。自らの判断に対するリスクが全くないコンサルタントの意見は適当な線で参考とせよ、という話だ。より大きな問題は、昨今のこの論争において、リスクを取る当事者が韓国国民のほかにはいないように見える、という事実だ。ひょっとすると、国民に産油国の希望を与えた政府だと、内心満足しているのかもしれない。結局のところ、緩い検証による全てのリスク負担は最終的に韓国国民が負う。そういえば、前政権の国家主導事業(4大河川事業、原発廃止政策など)の展開も同様だった。

 ぐずぐずしている創業者の卵を本物の創業者にする最速の方法の一つは、自分のカネを出して始めてみるように仕向けることだ。それでようやく徹底して検証を行い、成功のために見事な冒険を敢行する。国家経営も同じでないか? 誰もリスクを取らないまま「うまくいけばいいが、駄目でもただそれだけ」な新事業は、国民に夢を与えることはできない。

張大翼(チャン・デイク)嘉泉大学創業学部碩座(せきざ)教授(進化学)

【Photo】「アブレウ氏は顔立ちがヒディンク監督に似ているから詐欺師ではないだろう」 迎日湾の油田試掘巡る韓国証券会社の報告書が波紋

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