北朝鮮、休戦ライン付近に壁を建設…金正恩総書記の反統一政策で「国境線」設置か

 金正恩総書記は今年に入って南北関係を「敵対的二国間関係」とし、南北の断絶を予告してきた。金正恩総書記は今年1月、最高人民会議の施政方針演説で「共和国民族史から『統一』『和解』『同族』という概念そのものを完全に除去すべきだ」「境界地域における北南連携の全ての条件を徹底して分離するため、段階ごとの措置を厳格に実施しなければならない」などの考えを示した。北朝鮮が軍事境界線の鉄柵に加え、今回壁まで建設を始めたことは、これら一連の「反統一指針」を単なる宣言ではなく、物理的にも進めていく意向を示したものと考えられる。

 金正恩総書記は今年に入って北朝鮮憲法に明記された「北半部」「自主」「平和統一」「民族大団結」などの用語を削除する憲法改正の必要性を訴えてきた。その後も北朝鮮は平壌に設置されていた祖国統一三大憲章記念塔を撤去し、韓半島全体を意味する「三千里」という言葉も削除した。さらに統一戦線部の名称を「労働党中央委員会10局」に変更するなど、統一を目指す意味を含む組織名称も改編した。北朝鮮は子どもの名前も「統一(トンイル)」「韓国(ハングク)」「ハナ(一つ)」などとしないよう指示し、海外公館に置いていた統一関連の書籍も廃棄した。

 憲法から「平和統一」「民族大団結」などの言葉を削除するため、北朝鮮では今月末にも最高人民会議を招集し、憲法改正を進めるのでは、との見方も浮上している。北朝鮮は今月下旬にも朝鮮労働党中央委員会全員会議の開催を予告しているが、この場で「敵対的二国間関係」の設定に向けた議論を行った上で、憲法改正に着手する可能性が高い。韓国統一部(省に相当)は「最高人民会議後に外務省を通じて対南措置を発表するか、あるいは京義線断絶を一層明確に示す行動に出るかもしれない」と予想している。また北朝鮮が主張してきた「海上境界線」の一方的な宣布、あるいは「戦術的な挑発」を行う可能性も考えられると専門家は警告している。

 ドイツのベルリンの壁が崩壊してから35年、南北を分ける248キロの軍事境界線に新たに壁が建設されれば、中国・ロシアと米国との対立による新冷戦の到来を象徴する「第2のベルリンの壁」となりそうだ。北朝鮮による休戦ライン付近での壁建設について専門家からは「脱北経路の封鎖に加え、物理的な壁の視覚的効果を最大限に生かし、国内外にメッセージを発信する意図があるのでは」との見方も出ている。さらに「金正恩総書記が壁を建設して国境を管理し、北朝鮮国内の支配力を強化する必要が出てきたほど、北朝鮮国内の動揺は根強いのでは」との見方もある。ある軍事専門家は「今年11月の米国大統領選挙を前に、北朝鮮は壁を建設することで米国との交渉力を高めるねらいがあるとも考えられる」と指摘した。

ヤン・ジホ記者

【写真】北朝鮮側の監視所付近で建設工事を行う北朝鮮軍兵士たち(韓国側から撮影)

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