日本のアニメ映画『すずめの戸締まり』には多くの喫煙シーンが登場するが、道端に吸い殻を捨てる姿は見られない。出てくるのは吸い殻を携帯用の灰皿に入れるシーンばかりだ。任侠映画の中でありとあらゆる悪事を働くやくざが、吸い殻だけは携帯用の灰皿に入れて持ち帰るというケースもある。「たばこの吸い殻をむやみに捨てない」という生活態度が日本社会には深く根付いているからだ。しかし韓国はその反対だ。韓国を訪れた日本人たちは、ドラマの喫煙シーンすらモザイクで隠す国が、現実では人々がそこかしこに吸い殻を捨てているため驚くという。
その結果、韓国人は国外で恥をさらすことになった。日本の対馬にある神社が、韓国人観光客の立ち入りを禁止した。神社での喫煙が条例で禁止されているにもかかわらず、それを無視して韓国で過ごすのと同じようにたばこを吸い、吸い殻を捨てた。中には地面に唾を吐く人もいたという。何度指摘しても態度が変わらないため「韓国人の立ち入り禁止を解除するつもりはない」と言った。日本のあちこちで一部の韓国人によるたばこのポイ捨てが後ろ指をさされるようになってから長い年月がたつ。大阪にある飲食店の社長が「韓国人のお客さんがたばこの吸い殻を捨てるため困っている」と打ち明けるYouTubeの動画もある。
韓国でも吸い殻を無断で捨てているのが見つかれば処罰される。しかし、罰金はせいぜい5万ウオン(約5700円)と非常に手ぬるく、実際には見なかったことにして目をつぶってやる。しかし、国の外で同じように振る舞えば大恥をかくということを覚悟しなければならない。米国の一部の州とシンガポールでは、たばこをポイ捨てしたのが見つかれば約200万ウォン(約22万7800円)を払わなければならない。日本では、1回目は1万ウォン程度の軽い制裁だが、同じ行為を繰り返せば最大で1億ウォン以下の罰金あるいは5年以下の懲役という厳罰が下される。
2022年夏に洪水が起きた際、ソウルでは何人もの市民が命を落とした。降水量が多かったせいもあるが、たばこの吸い殻が排水溝のゴミ受け部分に詰まったせいで被害が拡大した。ソウル市内にはおよそ55万個の排水溝用ゴミ受けがあるが、たばこの吸い殻が詰まっていて十分な役割を果たせていない。排水溝のゴミのうち70%がたばこの吸い殻だ。国立災難(災害)安全研究院によると、ゴミ受けの3分の2が詰まると浸水の高さが正常な時の2倍にもなる。これは半地下に住む世帯にとっては大きな脅威だ。「たばこのポイ捨ては市民の安全を脅かす反社会的悪習と考えるべきだ」との指摘も出ている。
韓国ではたばこの年間消費量の半分に当たる320億個がポイ捨てされている。一部の喫煙者は「吸い殻をポイ捨てしなくて済むよう、十分な量のゴミ箱を設置してほしい」と言っている。しかし、たばこ用のゴミ箱が設置されると周辺が喫煙スペースと化し、悪習が漂うとの理由で大きな反発が出る。ペットが増え、外で出た便を持ち帰る携帯用のエチケット袋が定着した。たばこの吸い殻についても、携帯用灰皿を常に持ち歩いて各自が処理する市民文化が根付いてほしい。
金泰勲(キム・テフン)論説委員