韓国憲政史上初の検事弾劾案 韓国憲法裁判所が5対4で棄却

「スパイ捏造事件の報復性起訴」
「検事を罷免させるほどではない」

 憲政史上初となる現職検事の弾劾案が30日に憲法裁判所で棄却された。憲法裁判所は「ソウル市公務員のユ・ウソン氏スパイ捏造(ねつぞう)事件」の報復起訴を理由に弾劾訴追されたアン・ドンワン釜山地検第2次長検事について、裁判官9人のうち5人が反対したため弾劾を棄却した。今回の宣告と同時にアン検事は職務に復帰した。

 今回の裁判は、アン検事が2014年の「スパイ捏造事件」被害者であるユ・ウソン氏を「北朝鮮に不法に送金した容疑(外国為替取引法違反)」などで起訴したことが公訴権乱用かどうかが争われた。13年にスパイ容疑で起訴されたユ氏は国家情報院による証拠捏造などが明らかになったため無罪が宣告されたが、これに不満を持った検察がすでに起訴猶予となった事件を掘り起こし、報復起訴したというのが野党・共に民主党などの主張だった。野党が弾劾案を提出し、国会は昨年9月にアン検事の弾劾案を成立させた。

 裁判では裁判官らの意見が激しく対立した。棄却を支持した5人のうち3人(イ・ヨンジン、キム・ヒョンドゥ、チョン・ヒョンシク裁判官)は「アン検事に違法行為はなかった」と判断した。3人は「ユ氏の犯行については新たな事実が立証され、担当検事として再捜査の必要性を認識するのは妥当だった」と指摘した。アン検事は裁判に先立ち「(2013年の)捜査当時とは違い、ユ氏自ら不法に送金し、収益も相当な額だったことが確認され、起訴猶予だった事件を改めて起訴した」と弁明した。

 同じく棄却を支持した2人(イ・ジョンソク、イ・ウンエ裁判官)は「一部で法律の違反が認められるが、弾劾するほどの事案ではない」と判断した。「ユ氏が起訴猶予処分後に同じような犯罪を行ったとは立証されていないので、起訴は権限の乱用と考えられる」としながらも「ただしアン検事が権限を乱用した事例はこれ以外にはなく、この種の行為が繰り返される可能性が高いとは考えられないので罷免すべきではない」との見方を示した。

 これに対して4人(キム・ギヨン、ムン・ヒョンベ、イ・ミソン、チョン・ジョンミ裁判官)は弾劾を支持した。アン検事の権限乱用を「罷免を認めるに足る重大な違法行為」と判断したのだ。4人は「それまでの起訴猶予処分を撤回し、ユ氏を外国為替取引法違反容疑で起訴すべきほどの事実関係が解明されたとは言えない」「ユ氏に実質的な不利益を加える意図から起訴した」と主張した。さらに「侵害された憲法秩序を回復し、これ以上検事による憲法違反が繰り返されないよう厳重に警告する必要がある」との見方も示した。

 憲法裁判所は同日「弾劾訴追時効または弾劾審判の請求期間に対する法律の制定が必要」との意見も出した。公職者が公職の身分を維持するだけでいつでも弾劾審判を請求できるとする現行規定は見直すべきという趣旨だ。

イ・スルビ記者

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  • ▲憲法裁判所大審判廷(ソウル市鍾路区)での宣告を前に席に着いた韓国憲法裁判所の李悰錫(イ・ジョンソク)所長と憲法裁判官。30日撮影。/ニュース1

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