「出費しないわけにもいかないし…」 韓国人の必須生計費38%…過去最高を更新

 ソウル市恩平区に住む主婦のPさん(43)は最近、当座貸越口座を1つから2つに増やした。夫の給料は昨年とさほど差がないが、食料品、交通費、2人の子供の塾費用などの支出が前年より20%ほど増えたからだ。Pさんは「昨年から給料が出てもクレジットカードの返済に足りないことがしばしばあり、当座貸越口座を追加でつくった。電気料金の負担がぐっと増える夏が心配だ」と話した。

【グラフィック】韓国における可処分所得と必須生計費の推移

 世界的な異常気象と原油価格上昇などによって、食料品、交通費、住宅管理費などが上昇し、今年第1四半期(1~3月)には必須生計費が所得に占める割合が過去最高の38%を記録した。必須生計費は飲食(酒類を除く)、家賃、水道・電気・ガス料金など住居・水道・光熱費、公共交通機関の運賃、ガソリン代などの交通費、外食費など生計を立てるのに欠かせない費用を指す。必須生計費の割合が高まる原因は、支出増が所得増のペースを上回っているためだ。本紙がこのほど、韓国統計庁の家計動向調査を分析したところ、第1四半期の全世帯の月平均可処分所得(所得全体から税金、利払い、社会保険料などを除いた残額)は404万6185ウォン(約46万3800円)で、昨年第1四半期に比べて1.4%増えるにとどまった。これに対し、月平均必須生計費は153万6317ウォンで、同じ期間に3.3%増加した。

■「旅行を減らしてもカード返済増大」

 必須生計費の割合は、コロナによるソーシャルディスタンス確保で日雇い労働者や自営業者の収入が急減した2021年第2四半期に37.8%で過去最高を記録した。その後は次第に低下し、2022年第1四半期には過去最低の34.5%となった。しかし、その後物価高で必須生計費の上昇傾向が続き、今年に入って過去最高を塗り替えた。

 必須生計費の負担が増えた最大の要因は、食料品価格の高止まりだ。今年第1四半期にはリンゴ(71.9%)、ネギ(44.3%)、キュウリ(13.3%)など農産物物価が前年同期比で大幅に上昇し、チョコレート(11.7%)、春雨(10.1%)、牛乳(6.5%)、ゴマ油(4.9%)など加工食品も上昇傾向を示した。ピビンバ(6.2%)や冷麺(5.9%)など外食費用も物価上昇率全体を上回る値上がりを示した。

 こうした中、市内バス運賃(11.7%)、タクシー運賃(14.6%)が2桁台の上昇を示すなど、交通費の負担も増大した。必須生計費の負担が重くなったため、子育て世帯はレジャー消費を減らしている。京畿道富川市に住むLさん(31)は「昨年は子ども2人を連れて毎月キャンプに行っても、1カ月のクレジットカード利用代金が150万ウォンだったが、最近は費用を負担できず、旅行を大幅に減らした」と話した。Lさんは「ほぼ『引きこもり』の生活をしているのにカード利用代金が160万ウォン以上に膨らんだ。キュウリやズッキーニなど子どもの健康のために食べさせなければならない食材が大幅に値上がりしたことが最も大きな負担だ」と話した。

■第2四半期にも負担続く見通し

 高金利の長期化で利払い費用もかなり増えた。第1四半期の1世帯当たり月平均利払い支出は前年同期比11.2%増の13万7598ウォンだった。2022年第3四半期(19.9%増)から7四半期連続で2桁台の上昇が続いている。

 支出がひっ迫した世帯は当座貸越に依存している。京畿道光明市に住むOさん(44)は、「7年前に年2%台の金利で借りた住宅担保ローンの金利が4%台に上昇し、元利返済負担が増えたほか、生活費も増えたため、当座貸越が欠かせない存在になった。周囲の人々も事情が似ているのか、『100万~200万ウォン貸してくれないか』と尋ねてくる友人の携帯メールが増えている」と話した。

 専門家は第2四半期も加工食品を中心に物価上昇が続き、家計は第1四半期に劣らず厳しいと予想した。延世大経済学部の金正湜(キム・ジョンシク)教授は「政府の物価安定基調に合わせ、顔色をうかがっていた調味料・菓子など食品メーカーが相次いで値上げを決定し、物価上昇要因が目につくようになっている」と話した。

鄭錫愚(チョン・ソクウ)記者、カン・ウリャン記者

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