「北を称賛」と物議を醸した平壌演説巡り文在寅前大統領「民族の自尊心・不屈の勇気という表現は私が入れた」(上)

〈李河遠の外交プリズム〉
文在寅・前大統領の回顧録、2018年9月の「北朝鮮称賛」論争演説の件も蒸し返す
「平壌の発展に驚いて…民族の自尊心を守る不屈の勇気を示した」と演説
「保守層が不満に感じるかもしれないが、言うべきだと思って押し切って言った」

 5月17日に出版された文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の回顧録『辺境から中心へ』に対する批判世論が強まっています。「韓国大統領が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権の精神的捕虜になったのではないか」という指摘が出るほどに、全655ページにわたって、北朝鮮に傾倒した見方を示した-という批判が多いです。回顧録の基調は「米国に対する不満と北朝鮮の非核化意思代弁」です。文・前大統領は同書で「米国や韓国の極右勢力は、北朝鮮の非核化ではなく北朝鮮を崩壊させることが究極の目標なので、制裁緩和が話し合われること自体を嫌った」と書きました。「私は反対に、後悔している」「制裁解除についてわれわれがもう少し積極的に説得し、努力すべきだったのではないか」とも述べました。(128ページ)

 文・前大統領は、金正恩総書記の立場を代弁しようと努力しています。「金委員長はしばしばそのような表現を使った。核は徹底して自分たちの安全を保障するためのものだ。使用する考えは全くない。われわれが核がなくても生きていけるなら、どうして多くの制裁を受けてまで、苦労して核を頭に乗せて生きるだろうか。娘の世代まで、核を頭に乗せて生きることはできないではないか。そのように、非核化の意思を、委員長なりに切実に説明した」(191ページ)

■北朝鮮の体制を称賛するかのような2018年の平壌演説

 文・前大統領の回顧録においては、これだけでなく、2018年9月19日の綾羅島5・1競技場演説に関する部分も注目してみる必要があります。文・前大統領は当時、「南側の大統領」と自己紹介し、まるで北朝鮮の体制を認めて「称賛」しているかのような演説を行って物議を醸しました。これについても5ページにわたって言及していました。

 文・前大統領はまず「南側大統領として金正恩国務委員長の紹介で皆さんにあいさつをすることになり、その感激を言葉で表現できなかった」と言っています。「圧倒的な群衆で、圧倒的な歓声だった」「動員された人々だとしても、大変な歓迎を受けたのだ。その多くの平壌市民と初めて対面することで、胸がいっぱいだった」と述べました。(300ページ)

 今回、文・前大統領の回顧録で再び登場した5・1競技場演説において、最も大きな論争になっていた部分は、次の四つの文章です。「今回の訪問で私は平壌の驚くべき発展の様子を見ました。金委員長と北の同胞たちがどんな国をつくっていこうとしているのか、胸を熱くして見ました。どれほど民族和解と平和を渇望しているか、切実に感じました。困難な時節にも民族の自尊心を守り、ついには自ら立ち上がろうとする不屈の勇気を見ました」

 この演説に対して、北朝鮮において生活水準が並外れて高い平壌でも餓死者が出ている実情から目を背け、金日成(キム・イルソン)一家全体主義社会を称賛した、という指摘が出ました。同族を殺害する6・25南侵や各種のミサイル実験と核武装で挑発してきた北朝鮮を被害者と認識し、北朝鮮の体制を褒めたたえる発言を、どうして大韓民国の大統領ができるのか、というわけです。『南側大統領だなんて』というタイトルの本を出版した金栄宇(キム・ヨンウ)元議員は「北朝鮮は2021年1月の第8次党大会のときに改正した党規約に(中略)最終目的は人民の理想が完全に実現された共産主義社会を建設することにある」「文在寅大統領は、北朝鮮がつくっていこうとする社会主義と最終目的である共産主義社会建設に同意でもしているのか」と批判しました。

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  • ▲2018年9月19日、当時の文在寅大統領が金正淑夫人と共に、平壌の綾羅島5・1競技場に入場してあいさつしている。/聯合ニュース

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