米ワシントンの「国際スパイ博物館」を取材した。4階の展示室では学生を含む観覧者が「わずか10年前までこんな機械を実際に使っていたなんて」「びっくりするし鳥肌が立つ」などと語り合っていた。
国際スパイ博物館では先週から北朝鮮の暗殺犯や工作員などが実際に使った毒針ペンや赤外線カメラ、通信機器など7点が新たに展示され、大きな話題になっている。
【写真】毒針ペン・自殺用リップ・通信用機器…米国の博物館に展示された北朝鮮工作員の道具
このスパイ博物館は2002年にオープンし、世界で最も多い1万点以上のスパイ関連展示物を所蔵している。昨年だけで69万人が訪れ、4年前にはギネスブックに登録された。この博物館で北朝鮮関連の展示は今回が初めてだ。今回本紙の取材に応じた博物館マネージャーのイライザ・ブラン氏は「博物館は世界中の新たな話題やテーマに関連する収蔵品を集めている」「今回入手した(北朝鮮関連の)展示物は他にはない幻想的なものばかりだ」と述べた。
中でも最も注目を集めているのが暗殺道具の一つである毒針ペンだ。2011年に北朝鮮へのビラ散布を主張した元脱北民人権活動家で自由北朝鮮運動連合の朴相学(パク・サンハク)代表暗殺未遂事件が起こり、北朝鮮偵察総局のスパイが逮捕されたが、その際スパイが所持していたのがこの毒針ペンだ。当時朴代表はこの人物に会うところだったが、直前で韓国の情報機関に止められ幸い無事だった。
このペンは一見するとごく平凡なパーカー製のシルバーのボールペンに見えるが、中にはペンではなく毒針が仕込まれている。右に3-4回回してからボールペンの上部を押せば毒針が銃弾のように飛び出す仕組みだ。毒針が命中するとその場で筋肉がまひし、息が詰まり命を失うという。この種の毒針はボールペンや万年筆などに仕込むのが容易で、射程距離も10メートルあるため近距離からの奇襲攻撃によく使われるという。1968年の青瓦台(韓国大統領府)襲撃事件でも使われ、1990年と95年の2回韓国に侵入したキム・ドンシク氏もこの毒針ペンを使った。
■自殺用毒入りリップスティック
暗殺犯や工作員が使った「毒入りリップスティック」も博物館で注目を集めている。黒い容器入りのリップスティックだが中には毒が入っている。博物館は「通常10ドル(約1550円)もしないリップスティックだが、その中に毒が入っているので使用した人間はその場で命を失う」「暗殺ではなく自殺用に使われるケースが多い」と説明した。