尹大統領に「アンニョンハセヨ」だけ…韓国語ができないソウルの外国特派員たち【コラム】

尹大統領の記者会見場に現れたBBC・ロイター・AFPのソウル特派員
韓国語ができず、取材・質問は常に英語
尹大統領にも英語で質問

 ロイター通信のジョシュ・スミス記者は「アンニョンハシムニカ」と冒頭に韓国語で言っただけで、その後は英語に切り替えて質問しました。2番目に登場したフランス通信(AFP)のキャサリン・バートン記者は、韓国語で一言も話すことなく英語で質問を投げ掛け、BBC放送のジーン・マッケンジー記者も流ちょうな(?)英語で質問しました。

 「いやいや、英米メディアの記者が英語で質問することは全く問題ではない」と考える人もいるでしょう。しかし、やはりこれは問題です。まず冒頭で述べたように、ジャーナリズムの基本的な心得に背いていますし、そのうえ外信での報道内容が不正確になる可能性があるからです。通訳者を用意していたとしても、自ら現地の言語でその社会を理解しているかどうかは取材活動に非常に大きな影響を及ぼすと言えます。

 数年前には、本国から派遣された某メディアのソウル特派員が、ソウル支局で雇用した韓国人記者に取材を全て任せ、記事の記者名だけを自分の名前にするというケースがありました。これは「黒髪の外信記者」の間で論議を呼びました。外国人記者が自分自身で韓国の取材をすることができないため、こうした事象がたびたび発生するのです。

 つまり、現在ソウルの外信記者たちは韓国についてさほど詳しくなく、知っていても支局のローカルスタッフが翻訳してくれた新聞記事の要約を、それも主な懸案だけを読んで、韓国の対外政策や汝矣島の政治についてリポートするケースが多いということなのです。

 先日、現在研修で滞在しているワシントンのジョージタウン大から遠くないポトマック川近くのカフェでコーヒーを飲んだのですが、どこからか韓国語が聞こえてきたので耳を澄ませて辺りを見回しました。ところが韓国人らしき人は全く見当たりませんでした。しばらく注意深く聴いていたところ、店内で流れている音楽がKポップだったのです。ネイバーでその音楽を検索したところ、ガールズグループNewJeansの曲でした。今年3月末にフロリダのオーランドに行った時も、レストランでKポップがかかっていてその人気を実感したのですが、ワシントンのど真ん中で再び耳にして、一層うれしくなりました。

 Kカルチャー(韓国文化)が世界に広がっているのですから、大統領室で開催されるほどの記者会見なら、外信記者たちが自分の駐在する国の言葉で質問する姿が見られればいいのに、と思いました。仮に英米圏の記者たちに無駄な優越感があるのなら、そうした優越感を捨てて、韓国語で自ら南大門市場の商人を取材し、韓国語の新聞を読み、韓国語でテレビやラジオの情報に接すれば、より正確な報道が出るのではないかと思います。

 韓国では不思議なことに、外信の記事というとなぜか公的な信用があるように考えられてしまうのですが、実は注意して読む必要もあると申し上げたいです。先に述べたように、ジャーナリズムの基本をおろそかにしているケースもあるからです。

 韓国の道路標識すら読めない外信記者が韓国の政治について記事を書いているとしたら、どう思いますか? 誰もが気軽に触れられる部分ではないような気がして、公論の場に疑問符と驚きを投げ掛けてみました。

ワシントン=盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者(ジョージタウン大訪問研究員)

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  • ▲9日、ソウル竜山の大統領室庁舎で行われた就任2周年記者会見で、英語で質問するロイター通信のジョシュ・スミス特派員。/NEWSIS
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